執事長 2020-02-25 19:00:33 |
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>ルシアン
あんた、ホントよく知ってるわね。あたしは遠吠え苦手なんだけどさ、兄貴は結構上手いんだ。悔しいけど。
( 人間界でワーウルフのおとぎ話が流布されているなんて知る由もなく、ゆえにネコ科の目をぱちくりさせて驚きを露わに。自分たちの種が遠吠えをするなんて、自身の価値観ではいわば内部事情の様なもので。子供が学校で学ぶ科目に得意不得意があるように、遠吠えにも巧拙があるのだと、従兄の名を出しつつさらなる秘密を打ち明けよう。だって、貴方が知りたいと言ってくれるから。内心は貴方が自分の種族に興味を持ってくれる喜びに染まっているが、言葉の結びには少しむすりとした表情を作って、彼に敵わない悔しさを表現するかの如く、乱雑にばさりと一度だけ尻尾を揺らして。「 うん、うんっ。ありがとルシアン、これホント可愛すぎ! 」何度も頷く代わりに、ブンブン激しく揺れる尻尾をさらに加速させて。その反射反応だけでも十分に歓喜を伝えられているのかもしれないが、それでもまだ足らないとばかりに言葉でも感謝を伝え「 ギンハに自慢し返してやろっと 」頭を掠める幼稚な企みを、隠す事もせず悪びれもせず表すのは、きっと貴方を信頼しているから。ふと、貴方のまとう雰囲気が変容していくのを感じ取り「 ルシアン…? 」不安、というよりも、純粋な疑問のニュアンスが多く含有された声音で名を呼んでみる。プレゼントを貰ったのはこちらなのに、貴方がありがとうを告げてくれた理由が分からず、尻尾の勢いは徐々に尻すぼまり、やがて静止して。首筋に感じる体温、先ほどより密着したことで、スン、と香ってくる貴方の匂いに違和感を感じ、少しだけ眉を顰めた。「 ……ねえ、ルシアン。あたしの勘違いなら良いんだけどさ、あんた最近身体の調子とか悪くない…? 」貴方を不安にさせたいわけでも、脅したいわけでもない。むしろ、どうか自分の馬鹿な勘違いであってくれと心底願いつつ、出来得る限り動揺を与えないためにも、小さな体をぎゅうと抱き締め返しながら「 あんたからね、病の匂いがするの 」素晴らしい夜に、美しく凪いだ水面に、恐る恐る一石を投じて )
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