執事長 2020-02-25 19:00:33 |
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>ラザロ
…いいや、これが初めてで、嬉しく思っている。
(ぐっと強まる繋いだ手の力。ふっと見上げた彼が発した詫びの、そこに籠められた色を捉えかねて言葉が詰まる。自身の機敏への疎さに少し眉を寄せて、しかし直ぐに素直な感情を彼に贈る事でそれを塗り替える。彼に引かれて歩むまま、覚える事すら叶わない廊下を進んで到達した先、広がった光景に息を飲む。「す、ごいな…」見張った視界に先ず届いたのは夏を象徴する花、それから連なる提灯、屋台。自然とは違う、だが確かに夏の匂いを感じさせる空気。感想を落とした声は弱く震えているが、そこに恐れや嫌悪は無い。あるのは、言動に追い付ききれない好奇と感動の色だけだ。彼の緩やかな先導に合わせて足を動かしながら、きょろりきょろりと初めてばかりの景色を頻りに見回す。「…む。もしや、狼、か…?」そうして歩む内に見え始めた屋台の番の輪郭に、いつか見たような耳と尾を視認し、同時に思い返した気まずい出来事に一度表情から色が引いて、唇を結ぶ。それからもう一度開いた口からは緊張に似た、何処か強張った音で誰にともなく問う声を零した。)
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