執事長 2020-02-25 19:00:33 |
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>ウーミン
ああ…!
(強く繋がれる手。それを頼りに窓から飛び出す。──瞬間、落ちていく身体。彼女以外に寄る辺の無い、腹の中が混ぜられるような不安定な感覚に唇を固く結んで、瞼をぐっと瞑る。たが、その感覚も合わせられた額と愉快そうに上がる声をきっかけに終わりを告げる。突然に緩む落下速度に恐る恐る目を開け、眼前に映る彼女の姿を認識して、安堵からか強張った唇の力がふっと抜ける。ふわりふわりと宙を漂う身は、それこそ一枚の羽根にでもなったような錯覚をさせ、何とも不可思議な気分になる。途中、ふと零された彼女の言葉に釣られて上げた視界の中には、ちかちかと瞬く星達と見た事も無い程の大きな月。「ああ、確かに。あの山で見るのとはまた違う。…うむ、綺麗だ。」思わず、嘆息する。己が住んでいた山とどちらが、等と無粋な事は考えない。比べる事は無意味だと、そう思わせる程の光景だった。暫しその景色に見惚れていたが、不意に変化した方向に気を取られ、無意味ながら平行を保とうとして足が僅かにばたつく。同時に、意識もしない内に絡め組まれていた指に力が籠り、くい、と軽く自分の側に彼女を引き寄せるように腕が動く。「…む、すまない。」数秒遅れて自らの行動に気付き、詫びと共に引いた分の距離を戻す。「君の行きたい方に行ってくれて構わない。私は此処の事をまるで知らないのだ。だから、何処にでも好きなように飛んでくれ。」未知の場所を探険する。幼稚にも思えるそんな好奇心が疼くまま、彼女へ楽しげに口角を上げた顔を向け、そう空を舞う散歩の続きを促した。)
***
ああ、今日も遅くまでありがとう、ウーミン。私も楽しかったよ。無理せずゆっくりと休んでくれ。
それではまた、いつかの夜に。…それまで、息災を願う。良い夢を。
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