この世界は、現実に少しだけ似た、けれど全然違う場所。
江戸幕府が政権を返還してより、諸外国に示しやすい名をと、この極東の島国は大和皇国となった。天皇陛下を国主とし、江戸の文化や技術を更に高め、豊かな国へと歩を進めて行った。
第二次大戦を勝利で締め括った大和皇国は、国土を拡げ更なる躍進を遂げた。広げた版図での工業、商業の収益によって、復興を通り越して莫大な技術開発予算を確保できている。
しかし上手くいっていることばかりではない。
戦後に得られた領土は戦働きで名を挙げた武辺者達に割り振られ、彼らを戦地で満足に戦わせるために国で駆けずり回っていた者達に与えられたのは疲弊した都道府県であったのだ。
何もわからぬ新たな領土とどちらが大変かなどと言い出せばキリがないのだが、貿易の不利は大きく、補填のために賠償金の一部が割り当てられはしたものの、復興が終わってみればそこにあるのは貴族社会。
やれ領地も貰えぬのは無能だとか、何も無い土地の管理は苦労がなくていいですなとか下らぬ鞘当てを繰り返す。
そんな大人たちから産まれた僕らは、皇立大和学院に通う生徒である。
戦争とか復興のことなんか知らないし、親同士が社交界で嫌味を言い合っている時にその子供たちは一緒に女の子を誘ってカラオケなんてこともよくある話。
親が真面目な顔で戦時戦後の苦労話を語って聞かせようと、子供は真剣に聞くふりをしてテーブルの下でスマホを弄っているものだ。
もちろん勉強だってしない訳じゃない。
将来は領地を継いだり、そうでなくても貴族出身の肩書きに恥じない職に就きたいくらいは考える。
そんな僕らの、まだ青春の途中のお話。
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