匿名さん 2020-02-11 22:19:53 |
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( 少年とはいえ男性だ。力の差は歴然で簡単に引き剥がされ、距離が生まれる。抱き締めた時に聴こえてきた少年の声は震えていた。その震えは恐怖からか、嫌悪からか。彼女にはどちらでもよかった。どんな理由でさえ、少年をこのままここに置いてはおけない。彼の顔面には “虐待” という可能性の証拠が色濃く残っている。虐待という理由付けで “保護” するなら誘拐にはならないだろう。少年と一緒にどうやって帰ろうかという思考を巡らせ、答を導き出すまで目の前にいる少年を見詰めていた。いくら考えても模範的な解答しか浮かばず、考えるより行動に移すと少年の右手を強く握りしめ自宅へアパートへと向って歩き出す。離されても今度は絶対に離さない──この手だけは。たとえ拒否されても離さずにただひたすら歩く。どんな事を言われても気にしない。弟に言われていると思えば可愛いものだ。保護した少年は弟と年齢が近いのもあり、尚更保護せずには居られなかった。ひたすら歩きあっという間にアパートへ到着する。『 狭いけど、中へどうぞ 』契約している部屋の鍵で解錠、彼を中へと招き入れてはすぐに施錠。アパートは四畳半一間。すぐに電気をつけると室内には壁一面に本棚が沢山並んでいた。その種類は豊富で児童書から専門書まで一通り揃っている。部屋の真ん中には四角い卓袱台と厚みのある座布団が二枚。とりあえず座布団へ座るように優しく声をかけると本棚からとある本を探し始め、数分も経たぬうちにお目当ての本を見つけた。それは少年が持っていた雑誌と同じ雑誌。バックナンバーを探すと何冊か残っていたので笑顔で少年に全て手渡す。 ) ちょっと待ってね。確かこのあたりに──あ、あった!過去に出版された古い雑誌しか残っていなくて申し訳ないけど、よかったらどうぞ。その雑誌、擦り切れるまで読まれているみたいだから好きなのかと思って。……それよりもお腹すいていたらなにか作ってくるから、本を読んで待っていてね? ( 弟へ接する様に優しく頭を撫でてから台所へと移動。前掛けエプロン姿になると明日の食事や彼への食事も兼ね夜の内につくっておこうと手際よく準備し、調理が開始されて )
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