泡沫の往く先。( 〆 )

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匿名さん  2020-02-11 22:19:53 
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  • No.18 by 香月 依子  2020-02-16 20:19:58 






( 今日も何事も無く穏やかな一日だった。その為、女学校で養護教諭としての仕事はいつもと変わらず定時に退勤となり。母親が彼女へ用があると言うので二ヶ月ぶりに実家へ帰る。実家では弟の成長した姿、母親の懐かしい料理をご馳走になったりと久しぶりの家族団欒。家族全員揃ったのもありとても賑わって楽しいひと時になり。時間は有限だ。刻一刻と時は過ぎていき、名残惜しくもアパートへ帰らなければならない時間となる。帰路に着く頃には真っ暗な闇の中を思わせる程に変化して。実家周辺の街頭の灯りは未だに極端に少なく、足音が闇夜の静寂の中静かに響いて。日の入りと大体同じ時間に彼女は何時も帰宅の途に着く。その頃はまだ陽の明るさがある為近道は滅多にしないのだが、女性がひとり夜道を歩くというのもあり本日はなるべく早く帰宅する為に近道を選択。暗闇にやっと眼が馴れるとその闇の中、薄らと人影に似た影を見付ける。
──こんな時間に子どもが?
気になって早足で人影へ近付くと見慣れぬバロック小屋がぽつりと。人影の主は小屋の前に居た。空になって埃にまみれたビールケースに座るひとの姿──黒ランの服装から学生だと勝手に判断する。この時間に帰宅しないのは余程の理由があるからだろうか。兎に角、きっと両親は心配しているに違いない。大人として対応する為にゆっくりと近付いて声を掛ける『 あの、こんな遅い時間にどうしたの? ご両親が心配──』暗闇ではっきりと姿を確認するのは難しいが、少年の顔が月光の仄暗い光の下、薄らと見えた瞬間言葉を詰まらせる。まだあどけなさが残り白すぎる程の肌。そのきめ細やかな肌に点々と色付く濃い赤紫。眼を見開き瞬きを忘れる程に目が離せなくなり、赤紫の色が頭にこびりつく。思わず手が震えた。それぞれ家庭に事情はある。簡単に口出しできないが、それは時と場合によるもの。少年が弟と年齢が近いのもあり姿を重ねてしまうと無意識に涙が頬を伝い、優しく抱き寄せていた。)
ごめんね……痛みに早く気付いてあげられなくて。私は、あなたの味方だから。




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