◆ 2020-02-02 20:14:34 |
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…そうか。なら、いい。
( 時間にして二年、けれど己の体感時間に換算すれば二十年あまりを過ごしてきたあの体と、神か何かの気まぐれでつい先日与えられたばかりのこの体ではまるで勝手が違う。相手の隣に立つ存在として恥じぬよう努力はしているつもりだが、やはり元の姿でいる時ほどの自信は持てずにいるのが現状で。初めはその場しのぎに投げた問いだったが、人の姿でも相手の役に立っていると知ることができ、僅かに不安が払拭され。返す言葉は少ないながらも胸の内でほっと息を吐き。幾らか普段通りの調子を取り戻した彼が不意に頭を撫でれば、おい、と反射的に眉間に皺を刻む。不満気な声に続く言葉はすんでのところで飲み下し、代わりに小さく溜息を吐いて。甘やかすと決めた相手に文句を言うわけにもいくまい。「━━なんでもない。それより、お前は座っていろ。」次は夕飯を作るのだろうと当たりをつけ、相手がキッチンへ向かう前に声を掛ける。自らが思い描く理想には程遠いとはいえ、最初から人間社会に溶け込めるだけの能力は備わっているようだ。一般的な家庭料理を振る舞う程度ならば造作もないだろう。「何が食べたい。なんでも…とはいかないが、ある程度のものなら作れる筈だ。」具体的な料理名が思い浮かばなければジャンルでいい、そう言葉を締めると腰を上げ。几帳面に袖を折って捲りながらリクエストを待ち。 )
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