つれづれ 2020-01-17 08:45:39 ID:5f5e6ea0e |
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【hpmi/とある病室、小説家の親友を持つ青年の独り言/捏造過多】
「…っんぶ…!…うぁ、…寝ちまってた、か…?」
心地よい微睡みに身体を委ねれば、紙の束に顔をぶつけて、むくりと身を起こして。まだはっきりしない視界で、ベッドをリクライニングしたまま、数十枚束になった原稿用紙を手に持っている事を確認する。数日前、学生時代からの親友が持参してくれた物語だ。消毒臭い院内での生活、緩やかに、しかし確実に、機能しなくなっていく身体…そんな理不尽で残酷な現実から、一時、自分の意識を別世界へ連れ去ってくれ、消耗した心を癒してくれる…ー彼の物語は、彼は、自分にとって大きな励みだった。大事な原稿を、一枚もベッド下へ落として無い事に小さく安堵の息吐けば、見慣れた筆跡で綴られた幻想を愛しむようになぞり、自然と顔を綻ばせて。
最近は執筆に加え、ラップバトルで益々知名度が上がり、彼も多忙で、以前より会えなくなった。少し寂しくは有るが、先の短い自分だ。遠くない将来、必ず来る別れに、覚悟はしてある。…心残りなら、数え切れない程有るが、自分を腐らせずにここまで生かしてくれた、ただ一人の親友の行く先が、明るくあれ、と願ってやまない。
「…あいつ、甘えんのへったくそだしなぁ。」
そこが可愛らしい所でも有るのだが。他者を頼る事も、心を開く事も不調法な彼を、無理矢理でも日の下へ引っ張っていく誰かが…彼を独りにしない誰かが、きっと現れますように、と。
「あ。……うん、こんな心配要らねぇわ。」
ぱ、と頭を過った、彼と並び歩く二人の人物に、自分の心配事は徒労だったと気付けば、じわり、ともたげる暗い感情を、深い溜息で掻き消して。どうにも自分は聖人には成れないらしい。
「…一眠りするか、」
動かしづらくなってきた手で、原稿を揃え、サイドテーブルへそっと置けば、手元のリモコンでゆっくりリクライニングを倒して目を閉じた。
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