身近で都合が良くてそれでも大切な存在〆

んー…誰だ、こんな時間に……はい、誰ですか？
(もう少しで寝付けそうなところでインターフォンが鳴り、中途半端に覚醒させられてしまうと不機嫌そうに呟き、のそのそとベッドから起き出せば玄関へと向かいドアを開け、不機嫌な態度そのままに応対をして。ドアの向こう側にいた人物の姿を視界に捉えるとため息が溢れ「って、なんだ…夏海か…」力の抜けた声を発すれば、どうせあがっていくつもりなのだろうと自然な動作で家の中へと促して)

(/そうですね、お互いにマンション辺りで一人暮らしがやりやすいかなと思います。なんなら同じマンションの別の階や隣とかでもいいかもしれないですね)

もー、なんだとは失礼な。夕飯まだみたいだし、一緒に食べようよ。お酒も買ったし飲まない？
(扉が開くと不機嫌そうな相手と対面し、頬を膨らましつつもいつもの残業で疲れていたのだろうと察し、中に入りながらスーパーの袋をキッチンへと置いて。毎度のことのせいか、どこに何があるかはわかっているらしく包丁やまな板、フライパンなどを取り出し、袋から買ってきたものを冷蔵庫に入れながらも楽しそうに表情を鼻歌を歌いながら料理を始め)

（／かしこまりました！では同じマンションのお隣に致しましょうか。そちらの方が楽しいかもしれませんね。長々と失礼いたしました。
また何かありましたら、よろしくお願いします。一旦下がりますね）

流石よくわかってらっしゃる、作るのも買いに行くのも面倒で今日はもう寝ようと思ってたとこ。でも、そこまで言うんならかまちょな夏海にちょっとだけ付き合ってやりますかねー
(こちらが何か言う前に夕食はまだだろうと言い当てられ流石だなと素直に感心し、早速食事の支度を台所で始める相手に気怠いけどしょうがないから付き合ってやるかといったスタンスでそんな軽口を叩きつつ、無遠慮に相手が持参した買い物袋の中を覗き込み「レモンサワーは…っと、おっ！あったあった」自分の好きなお酒を探し出して早速プルタブに手をかけて)

(/了解です。こちらも一旦失礼しますね)

かまちょじゃないしー。誰かさんは私がいないと干からびちゃいそうなんだもん。
(むっとした様子で口を尖らせるが、こちらも砕けた口調でふふっと笑いながらも言い返し。「あーっ、お酒ずるい！私も飲む！」と相手がお酒を飲んでいる姿を見つけて指を差し、行儀が悪いのはわかっていながらも相手の前なら遠慮はいらない、とこちらも料理しながら袋に残っていたカシスオレンジの缶を手に取りプルタブを引いて飲み)

いやいや、俺ってやればできる子だから！今日はちょっと気分が乗らないっていうか…とにかくそんな感じだから
(まるで相手が居なければ生きていけないだろうと言わんばかりの言い草に、自信を持って否定しきれない部分もあるのが悔しいようで慌ててそう弁明を試みて。調理中にも関わらずこちらへやってきてお酒を飲む相手に「飲むのはいいけど酔って手元狂わせたりしないでくれよ？黒こげの料理とか妙に甘ったるい料理は勘弁だからな？」この程度の量のアルコールでは心配ないとわかった上でそんな冗談を飛ばし)

慌て過ぎだよ、紘也。はいはい、紘也はやれば出来る子だもんねー。
(慌てて弁明する姿が可笑しく、くすくすと口に手を当てて笑えばからかうように述べて。機嫌よくまた一口お酒を飲み、「大丈夫、大丈夫！紘也なら黒焦げでも何でも食べてくれるって信じてまーす！」と笑顔で楽しそうに答えると、再び料理に取り掛かり。今日はオムライスなのかチキンライスの美味しそうな香りが室内には漂い始め、卵を器用に作ると盛り付けてテーブルへ置き)

ちくしょー…馬鹿にしやがってー
(まるで子供をあやすような調子で茶化してくる相手に恨めしそうな目を向けて、しかしそんな表情も長くは続かず、すぐに頬が緩めば、なんだかんだでこんな他愛のない会話と時間を純粋に楽しんでいて。楽しげに料理を続ける後ろ姿を肴にお酒をちびちび飲み「いやいや、俺には荷が重いっての！そんな不毛な努力は求めずにまず焦がさない努力をしてくれ…って、お、美味そうな匂いだな。今日のメニューはなんだ？」律儀に相手の発言にツッコミを入れつつ、次第に辺りに漂いはじめた食欲をそそる香りにそう問いかけ)

今日はオムライスにしたの。あとポテトサラダとかぼちゃがあったからかぼちゃのポタージュね。
(いつもと変わらない相手との他愛のない会話に安堵しているのかふっと笑みを浮かべたまま、出来たての半熟卵のふわふわとしたオムライスとたくさんの食材が入ったポテトサラダなどを指さして説明し。一旦キッチンへ戻るとスプーンやフォークなどを用意し席に座り、「お腹ぺこぺこだし、食べようよ。あ、その前に乾杯したいな」と声を掛ければ、飲みかけの缶を手に取り)

おー、どれもこれも美味そうだな…あ、なんか俺もめっちゃ腹減ってきたかも
(テーブルに並んだ料理はいずれも自分一人での食事ではまず食卓に並ぶことのないようなお洒落なものばかりで。なんとも現金なものでそれらを目にした途端に先程まで夕食を食べずに寝ようと考えていたのが嘘のように空腹が一気に押し寄せてくると、そそくさと相手の向かいに腰を下ろせば飲みかけのレモンサワーの缶を軽く掲げ「そんじゃまあ、今日もお疲れさん。乾杯」既にお互い思い思いに飲んでるのに今更乾杯も何もないような気はしたが口には出さず、乾杯の音頭をとって)

乾杯ー！…やっぱり仕事終わりのお酒っていいよねー。
(得意げに胸を張って笑うと相手のレモンサワーの缶にカシスオレンジの缶を軽く打ち付け、再び一口飲んで喉を潤すと一日の終わりを感じてかホッと息をつき。「いただきます」と手を合わせてケチャップをかければオムライスを一口掬って口に運び、舌先でとろけるような卵やチキンライスの優しい味わいに上出来だと頬を緩めて「我ながら今日のオムライスは上手く出来たと思うんだ」と述べて食べ進め)

正に、この一杯の為に生きてるーってか？
(なるほど確かに仕事終わりの一杯というのは何物にも代え難いなと相手の意見に同調しつつその喜びをお決まりの文句で冗談めかして言い表せば肩を揺らして笑い、缶の中に残り少しとなったレモンサワーを一息に呷り。続けて料理へと手を伸ばせばまずはカボチャのポタージュ、続けてポテトサラダ、そして最後にメインのオムライスを順に口へと運び、それらのいずれも率直に絶品と言ってもいい出来で、特に相手が自信たっぷりな様子で自画自賛したオムライスはかなりの完成度で「確かに、これは絶品だ、この前ガ○トで食ったやつより美味い！てか、この半熟のトロトロ感って出すの結構難しいんだろ？」その比較の対象に出したのが某チェーン店のレストランというのが残念感が滲み出ているが、自身としては最高の賛辞を送ったつもりで、普段あまり凝った料理をしない身としてはこの卵の半熟感だけでも充分に感動ものであるようで)

うん、それそれ。たくさん上司への不満もあるんだけど…なんかどうでも良くなってきちゃったくらい。
(段々と酔いが回ってきたか呂律はしっかり回っているものの顔は紅潮していくが、本人は気にせずに無邪気な笑顔を浮かべて。相手に続いて缶をを傾けて飲み干せば、自分の作ったオムライスを褒めちぎる言葉を鼻高々な様子で聞いていたが比較対象が某大手チェーン店のレストランであることがわかれば、「美味しいオムライスのお店なんてたくさんあるのに、なんでガ〇トなの？今度美味しいオムライス専門店でも行く？」と可笑しそうに口に手を当てながら笑いつつ、ご飯のお誘いを提案し。こちらも食べ進めていたが手を止めると、普段の酒癖の悪さのせいか相手の隣に移動してちょこんと座り、肩口に頭を乗せ甘えるように上目遣いをし)

ああ、それって前に言ってたハゲオヤジの件だったり？
(上司に関する愚痴と聞いて真っ先に浮かんだのは相手がハゲオヤジと呼んでいる相手にとって上司にあたる人物のことで、こちらも残業続きで大変ではあるが相手もまた別の意味で苦労しているんだなあとしみじみ考えていて。比較の対象として真っ先に出てくるのがそういった店であるのは独り身の男としての悲しき性というもので「しょうがないだろ、独り身の男の食の事情なんてそんなもんだっての…てか、それはそれとして夏海、お前もう早くも酔ってないか？」そんな風に軽く抗議していたが、何やら身体をくっつけるような仕草をする相手の顔が僅かに赤らんでいるのがわかるとどうやらまた酔いが回って悪い癖が出ているみたいだなと察して。それがお酒の勢いによるものだとわかってはいても顔立ちも綺麗な相手にこうも迫られると目線が外せなくなってしまい、どぎまぎしながらもどうにか押し退けようとして)

そうそう、あのハゲオヤジ。仕事増やすくせに口だけは達者なの。あームカつくよ…！なんであんな人が上司なの…！
(事務職は定時で帰ることが出来る仕事ではあるがやはり人間関係は思ったより複雑らしく、相手の言葉にスイッチが入ったかのようにぶつぶつと愚痴を零し、溜息をつき。相手の返答に「独り身かあ。確かに紘也、なかなか彼女できないもんねー。…ん？酔ってないけど……？うん、紘也の匂い、落ち着くなあ…」と無自覚ゆえにキョトンとした表情を見せつつ、自分を押しのけようとする相手の腕にお構い無しに腕を絡めようとして)

今日も溜まってんなー…うんうん、上司なんて大体どこもそんなもんだ、口先ばっかでてんで使えねえの
(どうやら当たっていたらしく、途端にスイッチでも入ったかのようにこれまで溜まりに溜まっていたのであろう愚痴を吐き出し始めた相手を宥めるような口調ながらもその言葉には同調しつつ「まあ、気分転換にさっき言ってたオムライスの店でもなんでも付き合ってやるからさ、お互いがんばろうぜ？」直接的な解決にはならないが、それでも現実逃避ぐらいなら付き合ってやるからとサムズアップをしてニィッと笑って「酔ってるやつはみんなそう言うんだっての…ちくしょう…事実だけに言い返せないのが悔し過ぎる…」こちらの抵抗もものともせずにグイグイと迫ってくる相手にたじろぎながらも、彼女が出来ないという核心を突かれるとなんとも言い難い表情になり)

やった！ありがとう！さすが紘也。大好き。
(日頃の積もりに積もった愚痴を全て吐き出したくなるほど腸は煮えくり返っており、顔を真っ赤にしてわなわなと拳を震わせていたが、いつもと同じく自分に同調しながら宥める相手の優しさに励まされたのかいつの間にか機嫌は直りぱあっと無邪気な笑顔を見せ、日頃の鬱憤を晴らしに行けると思えば我ながら現金だと思いながらも嬉しげに表情を緩め。「って言いながら私も今はいないけど…。二人揃って独り身だし、いつか…この人だ！って人に出会えたらいいね。どこかに私がいいって言ってくれる、そんな人──……」とたじろぎながらも振りほどくこともない相手にしがみつきゆったりとした口調で述べ。しかし、次第にお酒も完全に回り仕事の疲労もあるためか肩口に頭を置くような体勢で微睡み始めていて)

はいはい、相変わらず大袈裟なやつだな…夏海は
(さっきまでの愚痴を吐き不機嫌そうな態度をとっていた相手はどこへやら、満面の笑顔を見せる変わり身の早さに軽く呆れながらも大好きの一言には少しばかりドキッとして、顔を背けて。「さあなー、それがいつになることやら…もしもお互いこの先独り身でさ、夏海が貰い手がなくなったその時は……って、寝てるし！？」抵抗することも諦めて、されるがままになりながら遠い目をしてそう呟き、隣の相手を見やればそこにはウトウトしている相手がいて、寝るの早過ぎないかとツッコミを入れながらも、もしもあのまま相手が眠っていなかったら自分はあの後続けて何を言おうとしていたのだろうかと思い返すと途端に気恥ずかしくなって、少し酔ったかなと、らしくないことを言いそうになったのも全部お酒のせいにして相手の寝顔を暫く見やり)

──……あ、あれ？私、いつの間にか眠って……ご、ごめんね！なんでこうなってたのかわからないんだけど…！
(睡魔に襲われ少しの間眠っていたがふと目を覚まし瞼を押し上げると自宅ではない、そうだ、相手の部屋にいるのだ──と記憶を思い出すように部屋を見回して把握したが、甘えるようにがっちり相手の腕に絡まった自分の腕に気付いて相手の体温や匂いが感じられると、急に恥ずかしさが襲ってしまい顔はりんごのように赤く染まり。慌てて腕を離せば両手を顔の前で合わせて謝罪を口にして。自分の酒癖の悪さは無自覚であり、しかし周りからは呆れるほどのものだと聞いているためかあはは、と苦笑を漏らしながらも「食器片付けてなかったね。片付けたら一旦帰ろうかな」と述べて食器を片付け)

やっとお目覚めか、全く…困ったもんだよな、あれぐらいで酔い潰れて眠っちまうなんてさ？まあ、俺としてはちょっとばかし得した気分だったりもする訳だけどな
(気心の知れた友人とはいえ異性でもある相手と密着したままのこの状況はなんとも照れ臭いが、それでも寝ているところを起こす訳にもいかず、特に何をするでもなく所在なさげにしていたが、暫くして目を覚ました相手から何やら慌てているような雰囲気を感じ取れば逆にこちらは気恥ずかしさなどが吹き飛んで、妙に気持ちが落ち着いた様子で軽く肩を竦めれば異性に腕を組んでもらえたというのは自分的に美味しいシチュエーションだったとそんな冗談を飛ばす余裕まで見せて。「あー、そうか…もうこんな時間か。ていうか、片付けならキッチンに置いといてくれれば俺がやっとくからいいぞ？」帰ろうかという言葉に時計を確認すれば確かにそれなりの時間で、後片付けをしてからだと言う相手に対して流石に料理をさせた上に片付けまでさせるのは少しばかり心苦しくもあるのかそう申し出て)

疲れてたせいかすぐ眠くなっちゃったんだよね。寝顔見られたのはまずかったかも…さすがに。ヨダレ垂らしてないといいな…。
(最近は仕事に慣れてきたが膨大な量の作業をこなしておりそれに付け加えて上司の嫌味が負担となっているせいか、疲労感はなかなか拭えていないのも事実であると頬を掻き。冗談を飛ばす様に先程より心は軽くなったものの、友人といえど相手は異性であるのは事実だと改めて認識すれば恥ずかしさが込み上げ肩を竦めて問いかけ、相手の気遣いを感じれば「じゃあ、今日のところは帰るね。隣だから、すぐそこだけど」と隣にある自室を示すように指差し、バッグを肩にかけて玄関へと歩いていき)