! 2019-11-01 16:11:42 |
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「 ありがとう 」
( その言葉を遺して長年仕えていた主人はその天寿を全うした。加齢による老化と病はこんなにも主人を痩せ細らせてしまうのか、とルシアンは彼女の骨と皮だけのような細いまだ温もりのある手を優しく取ると大事そうに包み込みそしてその手の甲に最初で最後の敬愛を示す口付けをする。何回何十回もこの身を受けてから、こうした別れを経験してきた。それは何度経験していても慣れないもの。その度に締め付けられる胸の痛みと、どうしようもない孤独感は変わらない。はるか昔に、この感覚から逃れたくて一度主人に寄り添わない態度を貫き通したことがあったが、結局は無意味に終わった。どんなに主人に素っ気ない態度をとり、義務的なことしかしなくても、それでも最期には主人は笑って自分に感謝を述べるのだ。あの時の後悔と悲しみはもう二度と味わいたくないと決めた。ルシアンは閉じていた瞳を開いてそっともう動かない主人の両の手をゆっくりと胸の辺りで組む。主人の顔は幸せそうでなんとなく口元も微笑んでいるように見えた。主人は寄り添う自分がずっと傍にいることで、生涯独身を貫いていた。別に結婚をしても良いのだと伝えても、相手に嫉妬や悲しい顔をさせたくないからと恋人さえも作ろうとはしなかった。優しい人だった、心から本当に優しい人だった。生涯独身を貫いた主人の最期を看取れたのはルシアン一人だけだ。すでに彼女の身内は亡くなっていたし独り身のため子も孫もいない。天涯孤独という選択を彼女は若くして決めしてしまった。その選択をさせてしまったことに罪悪感を抱かないわけではなかったが、彼女は今この時までルシアンを責めるようなことを一切しなかった。むしろことあるごとに感謝と謝罪を繰り返してきた。目を閉じれば出会った頃が鮮明に蘇る。その時から仕えて数十年。毎日が新鮮で充実した日々だった。目の前で眠る主人にルシアンは最後の笑みを浮かべる。自分たちカクテルは、その主人の生涯を全うするまで仕え続ける。残されたルシアンに待っているのは現世に留まれない身体が朽ちるように消えていく現実だ。気がつけばすでに身体は光の珠を出しながら消えかかっている。このシステムはルシアンにとっては救いだった。それは敬愛する主人の目の前で消えることがないからだ。ちゃんと主人と別れを済ませてから訪れる現象。風に溶けていく感覚を覚え、ルシアンはゆっくりとその瞳を閉じた。そして最後に眠る主人に向けて深々と頭を下げた。「マスター……」と主人を呼び、そして消えていく中で、ルシアンは最後に一言を告げた )
ありがとうございました。
(/お題通りになっているのか分からないのですが、支離滅裂な粗末なもので本当にすみません。できるだけ長文になるように頑張ってみたのですが、結局何が言いたいのか分からないものになってしまいました……。
「 カクテル男子 」トピから出張で来させていただきました。当方のトピではこのようなシチュエーションを出せませんので、カクテル男子たちが例外なくこうした別れを経験して今のトピ内で主人と会話を楽しんでいるんだなぁと思っていただけたら幸いです。
こういったトピを立ててくださったトピ主様に感謝します。
トピの主旨に合わなければ削除依頼出させて頂きます。
勧誘は希望したいのは山々ですが、リアルが忙しいので今回は不可という形を取らせて頂きます。 )
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