きめつの

きめつの

徒然  2019-09-30 00:56:08 
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とあるトピックで作った伽羅設定が何となく気に入ってしまったので、短文もどきを細々書いて行こうと思ってコソコソ。

※きめつのやいば、の二次創作になるからできる限りコソコソする

※勝手によその子に設定をつけないように気を付ける

※勝手によその子を登場させるのをなるべく避ける、もしくは名前だけの登場に留める

以上の事を気をつけてコソコソ噺。
鳥頭だからちゃんとメモって置く事。

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  • No.5 by 徒然  2019-10-06 07:05:08 

己の感覚だけが頼りである。

桜は倒木に腰掛けて、名も知らない虫がメヒシバの葉を登っていくのを眺めていた。
時間帯は夜、森の中で少し開けた場所を、満月が煌々と照らしていた。
夜といえば鬼の活動時間、つまりは鬼殺隊の仕事をする時間である。

桜はそんな中で、ただ腰掛けていた。
勿論サボっている訳では無い、こう見えて桜は真面目な鬼殺隊士だ。
まして、無警戒で座っている訳でも無い。

かさり、とともすれば葉擦れの音に紛れてしまいそうな音がする時には、桜の手は自然と腰の刀を触れていた。

───ああ、来た。

桜の足が地面を強く蹴った。
体が浮く、美しい満月が近くなる。
ヒュウウ、と大きく息を吸う、風の逆巻く様な音だ…森ならば紛れる音。
重力が復活する、大地が桜に帰っておいでと手招く。
空中で体勢を変え、頭から地面に向かって墜ちる。
標的が目の前から消えた鬼が、困惑した様に空ぶった両腕を見つめているのが見えた。

───水の呼吸…壱ノ型

音の無い一閃であったと思う。
拘っている訳では無いが、桜は音を立てる事が余り好きでは無い…らしい。
らしいと言うのも、桜が記憶を失っている為に自己すら不安定な部分がある故の言葉だ。

過去に興味は無い、忘れたという事は忘れなければならなかったという事だ、と桜は勝手に思っている。
が、心の内にまだ「こうしていたい」と思う、思い続けている事があるのならば、続けたいとは思っていた。

「アアァァァァァァイヤァァァァアアアアア!?!??!??!?!?!!!?!」

汚い高音、というものは実在するものである。
なんというか聞くに耐えない甲高い悲鳴が、不快な耳鳴りを伴って接近して来ていた。
どんどん大きくなっている、声の出力が変わっていないのなら相当な速度で動いている事になる。
桜は声のする方を見つめる。

最初は点だった。
それは布に落ちた油が急速に拡がるように大きくなって、人の形になった。
金髪の少年である。

「アァアアァ!!!! ァ゙!?!?? 人!?」

少年が桜の姿を見つけた、涙やら鼻水やらでそれはもう汚い表情だが、そんな顔の少年から発せられたのは命乞いだとか助けを求める声などでは無かった。

「走って走って走って逃げてアアァァァ追い付かれる!!」

───落ち着け…。

首を激しく横に振りながらそれでも速度を緩めることなく走る少年に、馬を宥めるように両手を動かしてみるも、少年は落ち着く所かそのままの速度で桜に近寄り、桜の腕を捕まえて走り出した。
当然、引き摺られないように桜も大慌てで足を動かす羽目になる。

「落ち着けじゃないよ落ち着けじゃ!! いい!? 鬼が居るんだよ鬼が鬼が鬼がぁ!?!???? わかる!????」

走りながら叫ぶ少年の肺活量やら何やらに、素直に感心しつつ

───鬼を狩りに来てるのなら出会って当然だとは思うが。

と、困惑した感情で桜は少年を見る。
桜は全力で両足を動かしているのだが、どうやら少年は脚が早いらしく桜に合わせて速度を抑えてくれているようだった。

「わかる!! 当然だよね鬼を殺しに来てるんだもんね!? でもね自慢じゃないけど俺弱いんだよ!? 殺されちまうよ死にたくない!!」

───鬼殺隊としてそれは大丈夫なのか少年………。

桜は本気で少年の事が心配になって来る。
桜は馬鹿ではない、こと剣術においては普通の人間より経験があるようだった。
桜の腕を決して話さない手は、何も知らない少年の手ではない。
刀の振るい方、鬼の殺し方を知る手だ。
静と動の使い分け方を知る、剣士の手だ。
努力の積み重なりを手から感じるのに、桜の腕を握る手は怯えに塗り潰されている。

努力をしている、だからこの少年は強い、少なくとも桜達を追っている鬼なんて敵ではない程に。
だが少年は自分を信用していない、自分の力が信用出来ない。
このままでは本当に少年はいつか死んでしまう。

少年が木の虚に桜を引き摺りこんで縮まる。
少年の速度に合わせて、桜も素早く身を屈めたものの、額を強く打ち付けてしまった。

「ファッ!? ごめん痛かった!? いやでも急いで隠れないと死んじゃうからほんと我慢してね!!」

そう言いながら蹲っている少年は、根っこでは優しい人間なのだろうなと桜は感じる。
恐ろしいという感情は伝わっていたし、兎に角早く鬼から離れたいという気持ちは言動や表情からわかったが、それでも桜の腕を掴んで離さなかったし、桜が遅れないように速度を落としたりもした。

桜は激しく打ち付けた額を軽くさする。
多分後でたんこぶになるだろうが、少年が気遣ってくれただけで桜にとっては十分であったし、打って赤くなった場所を桜が気にしただけで、少年は申し訳なさそうな顔をした。

「…俺は我妻善逸。怪我させちゃってごめん」

───別にいい、反応が遅れた俺の落ち度だから。

何故かはわからないが、少年…善逸には桜はの思っている事が通じた。
別に口がきけない訳では無いが、声を発する事をやめてしまった桜にとって、善逸の言葉を必要としない会話は楽しいものに思えた。

「そっちの名前は?」

純粋な疑問。
だが、桜にとっては桜自身も知りたい問題ではある。
思わずちょっと思考が停止する、どう答えるべきだろうか? …と。

「えっ…なんで困惑するの名前だよ…?」

善逸少年が困った顔をするので、桜は何とか説明しようと頭を回す。
あまり深い事情を話してしまうのは、善逸に悪いと思うので、取り敢えず記憶喪失である事、名前も忘れてしまった事を伝える。

───仮の名は桜。

と、言いながら腰の刀を僅かに前に出して善逸少年に見せる。
善逸は「ああ、透かし彫りから?」と納得した様だった。
そして、次の瞬間驚いた顔になる。

「刀!? 二本!? 日輪刀!?」

あんまりにも大きな声だったから、再び鳴き始めていた虫達は再び静まり返った。
今更気付いたのか、と桜の仲で呆れが顔を出す。
羽織りがいけないのだろうかとは思うけれど、桜が着ているのは何処からどう見ても鬼滅隊支給の隊服だ。

「………強い?」

縋る様な表情だった。
そりゃあそうだ、と桜は理解する。
自分の力を信用出来ないなら他人の力に頼るしかない。

───そこそこ。

そう桜が短く伝えれば、善逸は安堵したようで小さく息を吐いた。

己の感覚だけが頼りである。

その瞬間は殆ど反射で動いていたように思う。
善逸少年が反応して、頭を上げそうになるのを掴んで地面に押し付けつつ桜も全力で伏せる。
先程まで2人の首のあった位置が鋭い爪で抉り取られた。
鬼だ、血走ったあの目は飢えた鬼だ、人を喰う鬼だ。
桜は善逸を掴んだ腕をそのまま刀へ持っていき、一歩前進しながら頸を一閃して斬り落とした。
そして、斬りながら気付いた。

───しまった、桜の透かし彫り…!!

桜は腰に二本佩刀している。
事情があるとはいえ、いつも刀を間違えるから常日頃から問題にしていた。
日輪刀は菊の透かし彫りの方で、桜の透かし彫りはただの刀だ。

転がった鬼の首から髪の毛が伸びて桜の足を搦め取り、首を鬼の腕が掴んだ。

「………ッ!!!!」

激痛が走った、桜の脚に鬼が食らいついたのだ。

「雷の呼吸、壱ノ型」

シィイイと、蛇の威嚇に似た鋭い音が桜の耳に届いた。
後は、雷鳴。

鬼は何が起きたのかわからないと言いたげな顔で灰になっていく。
それはそうだ、あの速度の剣を咄嗟で反応できるのは剣の道に長く精通した人間だけだろう。
極抜かれた居合の一太刀だった。

───善逸

納刀した後、幽霊の様に立ち尽くす相手に近寄ればそのまま後ろに倒れようとするものだから、桜は慌てて駆け寄り頭を打たないように受け止める。

「……ふにゃ」

善逸は鼻風船を作って眠っていた。

───どうしようコレ…。

桜は隠の到着を待ちながら、取り敢えず膝を少年の枕代わりにしておいた。

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