きめつの

きめつの

徒然  2019-09-30 00:56:08 
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とあるトピックで作った伽羅設定が何となく気に入ってしまったので、短文もどきを細々書いて行こうと思ってコソコソ。

※きめつのやいば、の二次創作になるからできる限りコソコソする

※勝手によその子に設定をつけないように気を付ける

※勝手によその子を登場させるのをなるべく避ける、もしくは名前だけの登場に留める

以上の事を気をつけてコソコソ噺。
鳥頭だからちゃんとメモって置く事。

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  • No.1 by 徒然  2019-09-30 00:56:27 

冬季には剣の才能が無かった。
いや、有るには有るのだろう…だが鬼を斬る、鬼を殺すという事を考えれば冬季の剣の才はせいぜい下弦の鬼と相打ちが妥当だった。

冬季が得意であったのは、薬を作る事や薬膳を作る事。
表情や雰囲気こそ何処か人の寄り付きにくい冬季だが、人の気持ちを慮る能力の高い彼だからこそそう言った細々した他人の為の作業が得意であった。

変わって弟達は冬季に比べて大変剣の才が高かった。
冬季が師によって地面に叩きつけられているのを見てか、最初に剣の練習を始めたのは千夏だ。
千夏はその見目の艶めかしさから、幼い頃から少女と見紛えられていたが、道場に置いてあった素振り用の重い木刀を振る姿は武士の様で、誰よりも男らしかった。

花咲き誇る庭で宵闇に紛れ、月光に照らし出される姿を見かけた冬季は千夏の事を思わずには居られない。
あの子にだって好いた少女が居たのだ。

時折話題に出していたから、冬季はそれをよく知っている。
彼女の話をする時は、千夏は年相応の少年の顔で笑った。
あの時の様な頬の赤みも、白い歯を見せてはにかむ姿ももう見られぬのかもしれないと思うと、鬼への憎悪やら己の不甲斐なさやらが湧き上がる。
千夏はもう少女に会う事は出来ないだろうと思っているのだ、そして冬季もそう思っている。

千夏の次に刀を振るい始めたのは春木だ。
元より千夏と春木は口喧嘩の多い、悪友の様な兄弟であったから、千夏の始めた事を兄として真似ようとするのは目に見えている事だった。

春木と千夏が打ち合い稽古を始めた辺りから、二人が喧嘩になるのではないかと冬季は心配をしたのだが…。
剣術を磨き合う二人は実に真剣で、そこに邪な感情はなく
ただただお互いの剣術を磨き上げる事を第一に考えている様であった。
その様を見て、冬季は二人の美しさを感じ取り僅かに微笑みを浮かべたものの話し掛けなかったのをよく記憶している。
春木とは、冬季が母親を斬って以来会話をした事がなかった。

末弟の秋は剣術に興味を持たなかった。
…故に、だからこそ恐ろしいと言ったのは誰だっただろうか。
秋は気配を殺すのが誰よりも上手かった。
気が付けば師の背後をとっていたし、千夏や春木の背に虫を付けては逃げるのを見た事もある。
…冬季も、振り向くと後ろで秋が笑っていた事があった。
おそらく、秋こそが鬼殺隊に相応しい才能を秘めているのだろう。
あの柔らかい手のひらに刀が握られていたらと思うと暑くもないのに汗が額を伝う。

だから、だからこそ。
冬季は秋を鬼殺の場へ出したくはなかった。
秋が九つだからではなく、秋が弟であるからだ。
秋が冬季にとって愛らしい弟である限り、秋を戦場へ出すのはどうしても避けたかった。
嫉妬と言われてもいい、寧ろそちらの方が都合が良い。
家族にとって冬季とは嫌われた存在であった方が、冬季には都合が良いのだ。
冬季は親殺しであるから、親を殺した冬季は憎まれていた方がいい。

「其れがお前の意見かい?」

目を開くと、穏やかに微笑んだ姉が冬季の顔を覗き込んでいた。
…姉の弥生は耳が良い。
耳が良すぎて心の中を読まれてしまうのが、冬季にとってはほんの少し苦手な所だ。
数刻前の事を思い出す。
冬季には剣術の才能がない、故に練習しても能力の上がり幅は弟達より低いし微々たるものだ。
それでも、その事実を理由に剣を振るう事だけはあってはいけないと、師と共に剣術を磨いてきたつもりであった。
しかし、弟達の剣の腕と貪欲に力を求める心が冬季の予想を遥かに超えていた。

千夏に勝負を挑まれたのだ。
千夏と向き合い、お互いに剣を構えた時既に勝てないと感じた。
…感じてしまった。
そこからの勝負は一瞬であった。
こちらの一振よりも早く、千夏の一突きが冬季の首を射止めた。
…千夏は剣先が触れた時点で止まっていたから、痛みはなかった。
つまり、そんな僅かな力加減が出来る程、千夏は剣の腕を上げていたのだ。
千夏が「有難う御座いました」と納刀して頭を下げている間、後ろで腕を組んでいた春木の瞳が忘れられなかった。
それで、道場の真中で横になり、とうとう目の前に横たわってしまった事実に打ちひしがれていた所だったのだ。

姉の弥生は柔らかく、穏やかに微笑む人だ。
しかし、その根は強く、その心は何があろうと揺るがない堅牢さがあった。
実の母親が鬼となって、瞳を抉られた時だってそうだ。
熱が下がって目覚めた時、窪んだ眼窩に何も入って居ない事を知っても、「まあ有っても無くても変わる事は無いさ」と笑えてしまう様な人だ。

「冬季、おいで」

と、弥生が叩いたのは膝だ。
起き上がり、正面に座ったのだが…姉は緩く首を傾げてもう一度「おいで」と言った。
……弥生は、目が見えていないが耳が良い。
つまり、冬季が目の前に座った事はわかる筈だ。
弥生の意図を把握出来ずに、冬季は困った顔をしてしまう。
冬季の困惑を感じ取り、何か合点がいったらしい弥生は、鼓のように丸めた手をポンと叩いて

「冬季、膝においで」

と言った。
冬季は数拍置いて理解した後に「…姉上、オレはもう姉上の膝に乗れる大きさではありませんよ」と答えたが…弥生はすぐ

「では頭を乗せるといい」

と告げた。
確かに頭を乗せる事はいくつになっても出来る。
だからといって、されたいかと聞かれると冬季の場合は否だ。
もう既にそんな歳ではないし、姉の膝枕というのは何とも恥ずかしい。

「冬季」

優しい声色で、弥生は言う。

「冬季にとって、春木達が可愛い弟である様に、私にとって冬季はいくつになっても可愛い弟なんだぞ」

…冬季にはわかる。
姉とは生まれてきてずっと一緒に過ごして来たのだから、わかる。
冬季の兄もきっと解る。
つまりは「つべこべ言わずさっさと膝枕されろ」と言っているのだこれは。
姉は基本的に人の話を聞くような人では無い。
恥ずかしながら、嫌々ながら、冬季は弥生の膝に頭を乗せた。
弥生の膝は女人らしく柔らかく、安心感があった。

「冬季が誰の為に努力しているのかは、私も睦月も知っているよ」

ぽんぽん、と赤子をあやす様な優しい手つきで冬季の肩が叩かれた。
閉ざされた弥生の瞼には、そこにあるべき膨らみが無い、しかしその眼窩は確かに冬季を見ているようだった。

「千夏だって分かっているさ、それでも複雑な心がある、だから冬季に寄り添えない。…でも、冬季と共にある事は出来るからね」

理解してやってくれよ、と暗に言われている様だった。
そうか、あの子も鬼殺隊になりたいのか、と思わず表情を歪めてしまいそうになる。
眼球が奥から押されるような鈍い痛みが広がって来た。

「…春木は、少し混乱しているから冬季を嫌っているんだろうね。あの子は純粋だから、まだ母上の事を受け入れる事が出来ないんだろう」

春木は冬季をいつも憎む様な目で見ていた、親殺しを見る目だ。
最近の千夏との口喧嘩の内容も、冬季の事だという事を冬季は勿論、弟達を一番見ている兄…睦月も知っていた。

「冬季」

弥生の声色は何処までも優しい。
母が鬼として春木を襲った時すら、その声は優しかった。
誰かを叱る時も、窘めるような優しい声で話す。
その優しさがどうしようもなく冬季の胸に、針のように痛みを覚えさせた。

「すまないな」

喉の奥に焼けるような痛みが広がり、鼻に水が入った様な違和感が広がる。
ぼろぼろと溢れた涙を、誰かに見られない様にか、弥生が冬季の頭を優しく覆って抱き締めた。
弥生の心音は、声色と同じで優しくて穏やかだ。
冬季は弥生にどうか謝らないでと言いたかった、けれどそれは弥生も同じなのだ。
それを理解した。
弥生は冬季に「どうか嫌われないで」と言いたいのだ。

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