月光と餌

>>欅坂くるみ様
（近くの棚に荷物を置いてしまおうと足を向ければ、聞こえた声に緩く口角を上げる。気に入って貰えたのならいい、いつの時代も盛り付けは素敵な方がよっぽどいいし、最期の衣装も素敵な方がずっといい）
それは何よりです…着物、でしたか。東洋の衣服はあまり用意がございませんが、ここで過ごされる間に取り寄せるよう手配致しましょう
（その期間には言及せずに荷物を今度こそ棚へ。硬質な音がとても無機質で、このまま何も知らぬまま外へ逃がしてしまえばいいものをと思ったりもしたが…それを許される身分ではない）

>>カタスティア･ハーベル様
（それは柔らかく触れたはずだ。頬に触れた体温の低い手に従うように顔を上げたのは、その優しい手つきに従うほかないからであり、それは強制に近い。髪の毛の隙間からしっかりと交わった視線が不慣れな執事にはどうしようもなく怖く…つい数歩壁側へ退けば、目を逸らすよう緩く首を振って前髪で双眸を隠し、）
…喜んでお受けいたします、御主人様。何を、致しましょうか。お望みの書物も玩具も、何でもご用意いたします
（餌にもなれない執事にできる退屈しのぎはあるのだろうか？ご所望の品があるのならばなんなりと、とでも言いたげに、執事は主人を見上げ形のいい唇から紡がれる言葉を待ち）