募集さん 2019-07-31 21:37:58 |
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…、あっ、すみません、いつまでも。
( 瞬く暇もなく車は道路を駆け抜け、何かが擦れたようなエンジン音の余韻ばかりが鼓膜に残る。余程慌てていたのだろうか、何にしろご苦労なことである。あのスピードでは違反ではないだろうがパトカーと鉢合わせたら多少の注意は受けそうだ。野次馬みたく他人事のように考えながら車の姿を見届けたころ、今にも千切れてしまいそうな彼女の細い声が耳朶に触れてようやく意識が戻る。相手に回したままでいた手を退けると、不可抗力で彼女の赤く染まった顔が視界に入り )
え、あ、えっと…ごめんなさい!本当に!悪気はなかったんです、ただ驚かせたくなくて…つまり、その……ゆるしてください…。
( 条件反射で思わずその場から一、二歩後ずさる。顔が赤くて声も小さくて、あまり表情は窺えなかったものの、経験上それは正しく彼女が非常にご立腹であるとしか思えず。自分の顔が引き攣っているのを感じながら、自身の向こう見ずな行為に対する弁明を図ろうと。驚かせたくなかったのに結局驚かせたのは事実、そもそもよく知らない男に摺り寄られたら誰でも不快になるだろう。口からプロペラの羽でも旋回するように言葉が出てくるが、一体自分でも何を言っているのか分からず、最後には情けない萎んだ声で相手に詫びて )
( /お心遣いありがとうございます。速度について把握いたしました。当方は気長にお待ちいたしますので、どうぞお気になさらないでください…! )
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