白 2019-07-14 21:11:38 |
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▽pretty.scar
(カツン、と伸ばした爪でグラスを叩く。照明が絞られた仄暗いカウンターで、その音はやけに耳に残った。誰も居ないのを良い事に、だらしなくカウンターに突っ伏し乍らちびりとカクテルを流し込む。甘ったるさが舌に残る、高貴なオレンジ。白黒の愛しい彼の国ではバックフィズと言うのだったか。瞼を閉じて彼の顔を思い出そうにも、ふわりとした酩酊感の中ではぼんやりとした輪郭しか捉えきれずに、何となく泣き出したい気持ちに襲われる。昼間の喧騒から隔てられた孤独は、どうにも虚し過ぎたのだった。)
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