白 2019-07-14 21:11:38 |
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何から綴りましょうか。いえ、最初から書きたい事は決まっているのです。溢れんばかりのこの想いを、熱すぎて重たすぎて苦しいこの恋情を、さて何処から書き出そうと__、そんな事を思ったのです。そうですね、出会ったのは私が疲労に弱音を吐いていた時でしたか。私を気遣ってくれる貴方に対して、まるで初対面の様に振る舞いましたが、実は私は貴方の事を知っていたのです。貴方が一人で待ちぼうけを喰らっていた事を、私はひっそりと見ていましたから。貴方の寂しさは、何となく見当がつくつもりです。ただ、声を掛ける勇気は無かった。同じ境遇に身を置いた者として、共感出来ても貴方を喜ばせる術を持たなかったものですから、下手に貴方の時間を貰う事に引け目を感じたのです。そんな私の孤独を壊したのが、皮肉にも貴方である事に嬉しさを感じた私をどうぞ詰って下さい。同じ痛みを抱えた者同士、傷の舐め合いもしましたね。身のない会話といえばその通りでしたが、そのお陰で貴方が触れてくれる契機を得たので、結局のところ必要だったのでしょう。何より心の隔たりが薄まったのも、あれからでした。疲れた私を労り、小動物に癒されてこいと仰った貴方に、感じていた疲労も忘れて笑ったのは記憶に新しいですね。矢張り、貴方らしいと。そんな事を思ったものです。もふもふ、だなんて呼び方も、大柄な貴方に不思議とよく似合いました。その次に提案されたのは肩揉みでしたね。随分と物騒な渾名を付けられているものだと思いましたが、成程、確かにあれは目の前にチカチカと星が舞うようなそんな痛みでした。それと同時に、貴方にそんな渾名を付けたお人が貴方の言葉の端々から透過されるようでじぐりと痛みを持った事は、ここだけの内緒です。私の細腕を揶揄う貴方に同じく軽口で応じたあの時は、恋慕だけでなく確かな友愛もまた感じたのです。黙りこくった貴方に一抹の不安と寂しさを覚えると同時に、貴方ともこれでお別れかと挨拶を口にしました。それでもその場を離れなかったのは、もしかしたら最後に声くらいは聞けるかもしれないと、そんな狡い考えがあったからです。諦め半分でいるけれども捨てきれない執着に立ち去る事のなかった私に、貴方が声を掛けてきた時の舞い上がる様な喜びを貴方にお伝え出来たらどんなに良かったでしょう。負担になると分かって口にする事はありませんでしたけれど、貴方はそうやって何時も怖気付いてしまう私に、次の約束を取り付けてくれました。それが本物になるかは分かりません。きっと、私ばかりが残された約束の切符を擦り切れるまで握り締めて列車が来るのを待ち続けるのでしょう。それでも、未だ心は高揚したままなのです。貴方にまた会いたい、会えるかもしれない、そんな思いで今日も私は夜を梯子するのです。どうか、私を見付けて下さい。どうか、私を振り払わないで下さい。また、貴方と言葉を交わす日が来る事を切に願っています。
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