花冷えの心臓　　

…分かったよ。但し難しいな、と思ったら頼ってくれていいよ。友達だしね。
（　ひゅ、と微かな音をたて喉が鳴る。途端に波を寄せた自己嫌悪を宥めるように深く息を吐き、目蓋を伏せて向けられる笑顔から逃れるべく意識を遠ざけて。言わんとする言葉を理解し、彼自身ができることですら世話の名目を掲げて取り上げようとした図々しさに眩暈がする。度の過ぎた庇護欲を抱え込む己に心中舌打ちをし、ゆったりと顔を上げては苦笑の混じった曖昧な微笑みで肯定を　）
ごめん、取り乱した。樹に当たっても仕方が無いのに。
（　焦燥感に苛まれ浅くなった呼吸が、頭上の温もりによって徐々に正常へ傾き。尚も行き場のない不信感を包容した言葉達を喉奥に押しやり、力任せに嚥下すれば平静を取り繕うことは容易く。大人しく撫で受ける姿勢を装い、敏い彼に心中を悟られぬよう俯き加減で暫しの時を過ごせば意を決して頭上の手を握り視線を合わせ。友人として然もありなんだろう、空気を和らげる為に「昨日の長ったらしい検査疲れが響いてるかも」と僅かばかり表情を弛緩させ笑いかけ　）