匿名さん 2019-06-10 15:59:22 |
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>93 様
◇ごめんね、大好きだったよ
(僕は物心が着いた時から、可愛いものが好きだった。昔から男性的だけど整った顔立ちをしていたから、幼い頃から「王子」なんて呼ばれることも多くて。でも僕は男役として寮に入った。"可愛い"存在である女の子たちが好きになってしまっていた僕は、あくまで王子として 彼女たちの可愛らしさを最も近くで見ていたいと思ったんだ。
そして劇団の寮で同室になった少女は――ああ、今思い出しても心が震えるよ!艶のある腰まで伸びた黒髪、神様が天からすうと糸を垂らして引っ張っているように背筋は伸びていて、何よりあの瞳……凛とした、雪の降った朝の冷たい空気みたいに澄んでいる美しいオニキスが――僕の心を捕らえて止まない。彼女は可愛くて、酷く蠱惑的なひとだった。
彼女の名前は朝霧冬羽。時間をかけてゆっくりと距離を詰め、どうにか恋人という関係に落ち着いた。彼女があの白雪の肌を桃色に染めて、あなたの事が好きなの、と告げてきたあの可愛さと言ったらない。僕は心臓が張り裂けるかと思ったよ。いつも頭を撫でると擽ったそうに擦り寄ってきて、指を絡めると 少し迷ってからきゅうと握り返してくれたんだ。)……あの時の冬羽、可愛かったな……(おっと、つい声が出てしまった。今は休憩時間とはいえ稽古中なのだからしっかりしないといけない。……今の冬羽は、暫定的に僕のものではないんだからね。
一年前、彼女は掟を破れなかった。真面目な冬羽は社会的体裁を守ることを優先した。気まずい空気のまま、僕と冬羽は話さなくなった。僕は彼女の裏切りとも言える行為に深く傷ついた……なんて、馬鹿らしい。僕の愛がその程度で燃え尽きるとでも?はは、逃がしてたまるか。冬羽は僕のもの。僕の、世界でいちばん可愛いお姫様なんだ。僕が王子だと言うのなら、姫を手にできるのは僕しか居ないだろう?それが掟を破ることであろうと、社会のルールに反することであろうと!
冬羽にはずっと僕のことを考えていて欲しかったから、敢えて突き放そうと僕は考えた。自責と嫉妬に耐えられなくなって別れを告げようとする彼女を 僕の燃える愛を以て「許して」あげれば、きっと冬羽は僕だけのものになってくれるよね。
手始めに彼女とは真逆な特徴を持つ下級生とよく話してみた。彼女はあのオニキスを揺らして遠くから僕達を見つめていることが多かった。後悔と嫉妬の滲んだ漆黒が愛おしくて堪らない。以前から僕を熱い目で見ていた上級生にはちょっとした「お気持ち」を差し上げて、僕が件の下級生を上級生から庇ったという噂を流した。ある種「掟を破った」僕の行動を聞けば、多分冬羽は耐えられない。謝罪と離別を告げに、彼女はきっと僕のところへ来るんじゃないかな。)……冬羽。どうしたんだい?(ああ、愛しの姫君のお迎えだ!喚いて頬を撫で、君の悲しみを拭い去るように口付けをしてしまいたい。そう思う自分を宥めて、できる限り興味のなさそうな演技を僕は続ける。あと少し、あと少しの我慢さ。)……ああ、構わないよ。少し移動しようか、僕の部屋でもいいかな?(部屋の鍵さえ閉まれば、あの部屋は僕と君だけの鳥籠になる。ずるい王子でごめんね、ずっと君のことが大好きだったんだ。)
〆
(/僭越ながら続けさせていただきました!不慣れなもので軽いSSを書くみたいな雰囲気になってしまって反省しております。すみません。世都那さんの思い通りになるのかどうなのか、ご想像にお任せしますエンドで締めさせて頂きます。クソ長文すみません……)
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