匿名さん 2019-06-10 15:59:22 |
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>80様
【飛べない鴉】
(鬱蒼とした森の中、方角を見失ってどれほど時間が経っただろうか。迷っていると悟った当初、心細さで泣き喚いたが、体力を奪われるだけでなんの解決にもならないと理解した。理解すれば早いものだ。出口だと思われる方に歩みを進め、茂みをかき分けたその時だった。目の前の木の幹に、見たこともない生き物がいた。鳥…?人…??わからない。わかるのは、「それ」がけがをしているということだ。血が、漆黒の翼から流れている。遠くからじーっと、それを観察した。助けてくれそうなものなのかを見極めようとしたのだ。しばし眺めたがわからない。どうしようか決めかねているところに、それが声をかけてきた。変なことを言うものだ。見えるの?だって。おずおずと首を縦に振る。若干顔がゆがむそれに、一歩後ずさりしてしまった。怖いと思ったからだ。今思えば、彼は痛みを耐えていたのだろう。幼い私には、少しゆがんだその顔はひどく恐ろしく思えた。ゆっくりと息を吐いたそれが、やさしく「おいで」と呼ぶのを、どこか遠くで聞いた。まだ、信用できるのか決めかねていたのだ。最初の場所から動くことのないまま、視線だけを気まずそうに左右に動かした。次に発せられた言葉に、ゆっくりとそらした視線を彼に向ける。)…目を貸す?(不思議なことを言うと思った。小首をかしげながら、どういう意味かと思考をめぐらす。巡らせても、子供の私にはその意味を理解できはしなかった。今まで誰かから目を貸されたことなどないのだから、当然と言えば当然だろう。優しいまなざしを向けてくる彼が、悪意を持っていないことがありありとその瞬間分かった。本当に優しく温かいまなざしだった。子供の直観力のなせる業だったのかもしれないが、私はすっかり彼を信用した。ゆっくりと彼が背を預ける木に近づいた。)お兄さん、ケガしてるの?(血はやはりまだ怖かったからか、声が少し震えた。傷口をキチンとみる勇気はなかった。代わりに視線を地面に走らせると、ある一角に止血と痛み止めの薬草が生えているのがわかった。私の祖母は、森でよく薬草を取っては薬を調合して、村の人たちに分け与えていた。それをたまたま覚えていたのだ。目だけ借りるというのも、少し怖い。薬草もあることだし、傷を癒してもらってどうにか歩いてもらって、一緒に森を抜けよう。腹を決めると、小走りに薬草のもとに向かい、必要分を感謝をつぶやきながら摘み取った。体の向きを変えると、彼のもとに小走りに近寄る。むんずと薬草を彼の眼前に突き出した。)ひっ…ひとりじゃ怖いし…目借りるのも怖いし…だから…コレ!薬草…なの。おばあちゃんが取ってたの見てたから、使い方もわかるよ。お兄さんのケガ、きっとよくなるよ。だから…それから一緒に森を抜けない?(つっかえながらも、どうにか言いたいことを言い切り、彼をおずおずと見つめた。不安そうに見つめていると、彼の唇が動き出す。)↓
(/スペースお借りしました。ありがとうございました。子供っぽくなくなってしまったのを誤魔化そうと、大きくなった本人が語る感じにシフトしてみましたが、誤魔化せてますか?W傷ついても、子供を救おうとする鴉さんに胸きゅんでした。続けさせていただき感謝です。)
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