匿名さん 2019-06-10 15:59:22 |
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【 スノードーム 】
( ──窓の外では、雪が降っている。
『他に好きな人が出来たの』。彼女にそう言われたのは、つい先日のこと。今日は待ちに待ったクリスマスイブで、それをまさかこんな形で迎える事になるなんて、数日前の俺は考えもしなかった。ふいにテーブルの上に置きっ放しにしていた彼女へのプレゼントが目に入って、吸い寄せられるように包装を解く。中身は、明かりの灯った赤い屋根の一軒家と庭木という、ごくありふれたデザインのスノードーム。”今はまだ叶えられないけれど、いつかは君とこんな未来を築きたい”。そんな想いを込めていた自分が果てしなく滑稽で、打ち砕かれた未来があまりにも切なくて、彼女を想いながら、ただ、それを見つめる。──これはきっと、俺と同じように、幸せなあの頃のまま時を止めてしまいたいと願った誰かの幻想。 )
……そう思わない?
( コト、と、テーブルにスノードームを置く小さな音に、背後で肩を揺らす気配がする。そちらへ向き直ると、怯えた瞳が檻の中から俺を見ていた。愛しいその頬へと手を伸ばし、「スノードームの雪は愛情だと思うんだ」と穏やかな声色で語る。長い時間を掛けて降り積もった愛情。その上に築かれた幸せ。そして、それが引っ繰り返った時には目を曇らせてしまう程の、深い、深い、愛情の澱。
──雪はまだ止まない。 )
愛してるよ、○○。
( / 季節外れ感が否めませんが、クリスマスイブの一場面を書かせていただきました。お題とスペース感謝です。 )
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