匿名さん 2019-06-10 15:59:22 |
通報 |
○ガラスの靴は落とさない
もう、今日で終わりにしましょ。__貴方、つまらないから。
(到底指折りで数えられない程の逢瀬を重ねて来た。初めて会った日のときめき、二回目で知った感情の名前、重ねる度に増して行く触れ合う場所。思い出すには綺麗過ぎる記憶たちに苛まれるが如く眉を顰めると、自分よりも背の高い目前の男を見遣って。互いの距離が縮まる毎に増えていく安心感と、薄れていく胸の高鳴り。此方を覗く双眸に浮かんだ感情が驚愕でないところを見るに、彼とて同じような気持ちを抱いていたことは想像するに容易く。結局の所は、互いに恋をしていたのだ。愛してなどいなかった。ましてや、愛される事など。覚悟を決めて吐き出した筈の言葉は少し震えている。どうかそんな事に気付かないでいて。願い乞う様に、真っ直ぐと射抜く精悍な瞳から目を逸らすと、睫毛を伏せてから暫く口を噤んで。こくりと音を鳴らして唾を飲み込む。覆水は盆に返ることはなく、零してしまった言葉は二度と消せやしない。もう、後戻りなどできないのだ。浅い呼吸を幾度か繰り返して、言葉を紡ぐ。彼の目を見る事は出来なかった。瞳を覗き込まれたら、彼を傷付ける言葉すら嘘だと暴露てしまいそうで。じわりと滲み始めた視界。瞳に溜まっていく涙が溢れてしまわぬ様に、彼の返答を待つ事もなく踵を返すと鉛の様に重たい足を緩慢と動かして。回し慣れたドアノブ、扉の先に見える景色と耳に馴染んだ扉の軋む音。全てが愛おしかった筈なのに。古ぼけたアパートの階段を一歩降りる度に小気味好い程の足音が響く。ここには何も残していけない。冬の冷えた空気が痛い程に肌を刺して、頬を伝う涙の跡が一層冷たさを感じさせた。吐き出した息が白く濁りながら夜の帳に蕩けていくのを茫と見つめ続けて)
…終わっちゃった。
(/最近素敵なお相手様と出会えたため、リハビリや向上も兼ねて。素敵なお題をお借りしました。私の綴った文章に返答をして下さる心優しい方がいらっしゃいましたら、是非。スペースお借りいたしました。↓)
トピック検索 |