匿名さん 2019-06-10 15:59:22 |
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〇羽のない鳥
(ぶううん、ぶううん、何の音ともつかない家電の音が耳に煩わしい。過敏な神経に触る。部屋の隅に簡易な骨組みだけの折りたたみ式ベッドがある。それを開かずにベッドの足が横になるように床に倒してその上に膝を抱えて座っている。ベッドの座り心地は悪い、当たり前だ、本来それは開いて布団を上に敷いて使うものなのだから。部屋の中央には1台のノートパソコンが置かれている。カーテンは締切り光が全く入らないにも関わらずノートパソコンに付いているカメラが光り、目のようだ、と感じる。私の目は膝に隠されて何処も見えないが、ノートパソコンが存在するということは、そこに目があるということを暗示する。ぶううん、ぶううん、家電の音が響く。私は冷蔵庫のコンセントを抜いた。膝を抱えたまま。足はそこに無かった。また、冷蔵庫もそこに無かった。あるのはボイラーだ、これはボイラーの音だ、と思った私は洗面所へ向かった。鏡があった。私は目の前に映る人物の顔をまじまじと見た。彼女の目が光った。私はノートパソコンの目と目が合った。しかし私は膝を抱えて膝に顔をつけ蹲っていた。)
ただいま。
(男が帰ってきたのかもしれない、いや、きっとこれは夢想。私は決して覚めない、覚めてやらない、そう思い立ち上がった。お米を炊かなければならない。私の心は白い羽に侵されて、何も感じなくなった。私に足はない、手もない、羽もない、何も無いのにこうして生きてるなんて、そんな不思議なことがあるんだね。)
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