匿名さん 2019-06-10 15:59:22 |
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【召喚】
「地へと轟き邪を穿て!いでよ雷竜!」
『下されるは雷槌、裁きたるは天の理!夜を貫き暁を示せ!』
「ぎゃはははは、なかなか合わね。制御効いてないぞ」
『まあ合うわけないよな。実際に出せるわけじゃないし、効いてない』
「な~」
(それはいつもと変わらぬ、男子中学生の俺と戦友(とも)の、くだらない戯れの一コマ。今日は戦友から『雷呪文撃ちに行こうぜ』と誘われた。実際伝説の龍が乱心なのかというほど空模様は大荒れだったので俺はその話に乗った。故に今学校の裏山にある高台まで出てきて、制服をびしょ濡れにしながら即興呪文を唱えるに興じている。といっても、内容はタイミングを見計らい、呪文を唱えた直後に雷が落ちてくるのを待つだけ。呪文を唱えている最中だったり、唱え終わった10秒後に雷が落ちてくるとかそんなことばかりでどうにもタイミングが合わない。しかしながら、合わないこと自体もそれはそれで面白いので、奇跡と渾身の一発に期待しながら、戦友とバカ笑いし呪文詠唱を続ける。それに、こういうのは引き出しとセンスが同時に問われるから、結構面白いのだ。そう、これはいつもと変わらぬ悪ふざけ。それは俺も戦友も分かっていた。だから、今日はどちらかが奇跡の一発が入ったらそのまま帰り、びしょ濡れになって帰ったのを母親にそれはそれは正しく雷の如くこっぴどく怒られ一日は終了…となるはずだった。その時が訪れるまでは。)
「汝よ唸り怒れ、集え無慈悲の理の下に!圧せ、穿て、貫け、焼きつくせ!雷鉄槌龍(トール)!」
ドゴォォォォン!!!!
「う、うぉおおお!すげぇ!!」
『うおおおお!!やるじゃん!!これでお前はもう立派な雷魔法使いだな!』
「うおおお!!ふん、俺の才能がまた花開いてしまったか。」
『って…やばい、そろそろ帰るぞ戦友よ!さっきの雷で街が停電起こしやがった!冗談抜きでこのまま外にいるとヤバい!』
「フン、またやってしまったか…ってそれどころじゃない!間に合ってくれよ…!うわああああ!!」
(その時は訪れた。再び渾身の叫びで呪文(笑)を唱えると、視界の空の向こうで雲を裂いて龍を象ったような雷が猛スピードで急降下し、真下にあったビルの避雷針にその身が叩きつけられたのが見えた。その様を見届けるなり偶然の一致に2人は興奮が一気に込み上げて叫んでは、喜びあってハイタッチ。とんでもない偶然にお互いを称え合う。それまではよかったのだ。だが放たれた雷があまりに強く、それに伴う過剰な電圧は凄まじい速度で伝搬し、街4つ分ほどの範囲の全てで停電を起こさせた。それからは流石に、本格的にマズいと思ったらしい戦友に警告され、そのままお互い死にものぐるい、一目散にそれぞれの方向へ走り出して逃げるように家路についた。ほどなくして、高台で人の声はなくなり雨の降る音と時折地に叩きつけられる雷の音だけになり。今日の遊びは終わり。それはそうと、先程唱えた呪文が実は本物で、本当に雷竜を召喚してしまったことは、2人は知る由もない。)
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