匿名さん 2019-06-10 15:59:22 |
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【 俺は出来損ないだから & 初恋は叶わない 】
…… 。
( たった一人,とある城で空を見上げる。気分は曇っているのに,見上げる空は恨めしいほどに綺麗な群青色
を覗かせている。嗚呼,何故自分は何も力を持っていないにも関わらず,この国の後継者として存在してい
るのだろうか。種族としても我々吸血鬼は人間に恐怖を植え付けなければならない。でも,彼はそれをした
くなかった。其れは,あの日の出来事が強く関係している。誕生日で,パーティーが開かれた日だった。そ
の日は一年に一度のパーティー故に訪れて挨拶をしにくる令嬢は多かった。数少ない人間の種族だった彼女
は怖がることなく,俺に近づいてきてくれた。あの日彼女と遊び,夜を一緒に過ごした時間を忘れることは
出来ないだろう。その日,俺は彼女に恋をしたのだ。初めての甘い恋だった、。あれから早くも数年が経っ
た。俺は彼女と結婚することは出来ない。彼女の身分からして婚約しても申し分なかったのだが,一年前に
亡くなった先帝のご決意により,仲が悪い国といい国の王女を一人ずつ貰い婚約する政略結婚になったから
だ。次期皇帝になる者だとしても,出来損ないであるからこの婚約を無くすことは出来ない。彼女は彼女な
りに良い身分の人を見つけ出し,婚約するのだろう。そう考えると,苦しくなる。明日正式に婚約する俺は
もう彼女と手紙のやり取りをするのも控えなくてはならなくなるのだろう。
『 最後で良い,最後で良いから君に一目会いたい。 』
一人しかいないのに関わらず…否,一人だからこそ囁いた。夢での良いから出てきてくれれば良い,そう思
いつつ,ゆっくりと瞳を閉じ,眠りについて。 )
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