梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
ありがとうございます、榊さん。先にいただきました…とても良いお湯加減でしたよ。(たん、と軽い音を立て襖が閉まるのを確認して正面に向き直ると手に羽織を持った彼が思ったよりも近くに見えると驚きよりも先に嬉しさから笑みが溢れる。ふわりと肩にかけられた羽織は優しい香りがした。思いやりと信頼の成す柔らかな香り。こんな幸せを独り占めしてしまっては、明日バチにでも当たるんじゃないだろうか?わりと真剣にそんなことを考える。戦いの中、勇ましい光を宿す瞳が慈愛の色彩を帯びて弧を描く様子は美しくも可愛らしいと愛でる気持ちが強く、独占欲が鎌首をもたげ、その笑みと同じく柔らかく映る皮膚に手指を伸ばしかけるが、それよりも早く彼の口から悪戯気な声が文字を紡ぐ。「…はは、やはり榊さんには敵いませんね。」彼の冗談は冗談でありつつ、的確に相手の考え、行動を読んでくるものだから返す笑い声は脱帽の意が強く出る。つまりは図星だ。彼が戻って来るまで大蛇やヤマトの事について考えようかと思っていたが彼の読みの方が鋭かったらしい。取られた手は彼の仕草の柔らかさに雲を触っているのかと勘違いをしたが、この強く、美しい手を雲と見間違える筈はないので助かった。のそりと身体が緩慢な動きで彼と布団に引き寄せられる。師匠、今日だけは主人よりも先に布団に入る悪事を許してください…痛み止めが切れてきた頭ではぼんやりとしか許しを請えないし、まして彼の暖かい手に逆らえるほど我慢強くもない。「…榊さんの手は暖かいですね。」ゆるり、と目元と口元を緩めて布団に入るものの、手が離れるのが惜しくて、指を絡めて引き止めた挙句、その手の甲にマスク越しの口づけを。)
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