梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>梔
(彼を風呂場へと送り出したあと、客間に戻ると畳の上に置きっぱなしになっていた寝具を敷いて皺を綺麗に伸ばし整える。続いて空気を入れ替えるために縁側に続く襖と硝子引き戸を開けるとほんの少し肌寒い風が頬を撫でていき季節が巡りゆくのを感じて。ここ数日、様々なことが立て続けに起こり彼には多大な負担を強いた。彼は頭も冴えて立ち振舞いも上手いから辛い部分も見せなければ弱音も吐かない。悪いことではないのだが、欲を言えばもっと甘えてほしい。まあ、今の自分はそんな所望を言える立場でもないのだが…。もう二度と今回の過ちを繰り返さぬために、自分を慕ってくれる尊い部下たちを裏切らぬために己の精神を鍛え直さねばと強く誓い、吐きかけた息を飲み込んで。さて、そろそろ彼が湯浴みから上がるころかと思えば、彼が体を冷やして更に体調を悪化させてはいけないと押入れを開けて丁度良い羽織はないか探して。丁度そのとき襖が開かれては彼が顔出し、以前と同様、その普段とはまた異なる佇まいに目を奪われ、そこはかとなく纏う儚さと色気に小さく息を飲む。ふつりと沸いた不心得な感情を抑え込み、平常心を保てば「…湯加減どうだった?」と微笑みかけて今取り出したばかりの羽織を持って彼に近づきそっとその肩に掛けてやって。「…俺も今から入ってくるけど先に休んでていいからね。…って言っても起きてそうだから先に布団の中に押し込んでしまったほうがいいかな?」以前のように軽く冗談を交えて緩く笑みを浮かべて顔を覗くと、柔く手を取り布団へ誘うように軽く手を引いて)
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