梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
(彼を呼んでくる、と一人残された治療室の蔦が絡まる窓から外をぼんやり眺めつつ、これからのことについて考える。自分の傷は治療すれば治る。しかし、彼の心についた傷はどうだろうか、深々と刺さった今回の一件は簡単に癒えるようなものではない。それは、いつもは月をも見通さんとする曇り一つない叡智の瞳が、美しくも憂いを帯びて伏せた睫毛に隠れてしまっていることが何よりも多くを語っている。そして、新たに分かった『大蛇』への情報…つい先程処理をしていた部下から少ないながら大蛇に関する情報が2、3ほど入手したとの連絡があったばかりだ。彼ならきっと立ち直ってくれるはずだ、と信じる反面、もし立ち直った後には大蛇を潰す為に無茶をされるのではないだろうか、と不安に思う気持ちもある。自分の…先代を手にかけた敵らの敵討ちを実現させてくれた事もあり、なにより彼の復讐だというのなら自分の全力を持ってそのお手伝いをしたいのは当然だが、今の自分の実力で彼を守ることができるのか?そんな悩みを頭の中で整理していると聞こえてきた彼の愛しい声。「承知。」彼の視線が自分に向かないのは気付かないフリをして僅かに微笑む。このくらい、何ともないです、そんな意味をこっそりと込めて。「…榊さん、この間してくださった“出掛け”の約束、今使っても構いませんか」今きっと彼に必要なのは、静かな空間と、穏やかな時間。彼がこの約束を飲んでくれたのなら、自分の知る限りで一番の場所へ案内しよう。そう決めて上記の誘いを彼の後に続いて闇医者の戸を抜けた後に提案して)
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