梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>梔
(階下へ着くと当然のように出迎えてくれる部下と茉莉花。部下も自分に傷付けられたと言うのに純真に笑顔を向けてくれて、今はその笑顔が眩ゆすぎて目を背けたくなる。察しの良い茉莉花は何かを感じ取ったのだろう。部下を制して此方を気遣う問いに眉を下げては困った笑顔を向けて「…今から散歩がてら梔の傷の具合を診てもらってくるよ。茉莉花、来てくれてありがとう。…君も良く療養するんだよ。」と明確に大丈夫とは答えることなく茉莉花と部下にそれぞれ言葉を向けるも顔は合わせているようで目は合っていなく。『さ、散歩って…、』と戸惑いの色を見せる部下に苦笑を向けつつ背を向けては歩を進める。茉莉花は眉間に皺を寄せると梔の右肩を掴んで『…散歩で済ましとうせ。』と小声ながら強い意志を込めて言い肩からゆっくり手を離して。
寂れた廃墟地を抜けて暫く、特に会話をすることなく少し賑わいのある街を横目に路地裏に入っていくと抜け道を通り細い階段を下った先にある古びた木製の扉の前まで来て。ドアノッカーに手をかけトン、トトン…と特異なリズムを刻んで叩くこと暫く、ギィと音を立てて扉が開き中から白衣を着たヒョロリとした初老の男性が顔を出し。この男性は闇医者であるがこの界隈では名医でありヤマトも先代のころから世話になっていて。男性は自分たちの顔を見るなりニコリとして中に通してくれ奥の治療室の椅子へと梔に座るよう促し。『また派手にやったみたいだねぇ。…と、なんだい。お前達、喧嘩でもしたのかい?まあいいよ。とりあえず治療するから上だけ脱いでおくれね。』とまだ梔の身体に触れてもいないのに刀傷を見ただけで全て見透かす口振りで言うと痛み止めを打った腕に意味深に視線を落としてからテキパキ治療の準備に取り掛かり始め。その準備を見届けたあと「…丁寧にお願いね。」と一言残しては彼の傷から目を背けるように治療室から出てすぐ隣の待合室へと足を向けて。)
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