梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>梔
(己が命令を下すと共に動き出す3つの気配。2つは外へ、もう1つもと思ったが名を呼ばれ此方に応戦する動きを感じれば、その気配は一息として考える間など無かったにも関わらず淀みなく的確に動き──。砂利は見事赤髪の男の目に命中、その痛みに男は蹌踉めきながら堪らず咥えていた手榴弾の安全ピンを口から離して目を押さえ呻き声を上げる。その呻き声も彼の華麗な一太刀によって醜い潰れた声へと変わり男の胴体から血飛沫が飛んで。拍子に男の手から手榴弾が零れ落ち、それをすかさず掴み取り安全装置が外れていないのを確認して安堵したのも束の間、ガシリと凭れ掛かられるように男に胸ぐらを掴まれ『…ッ…ハハ…良い部下を持ったもんだなァ……だが、榊さんよ…、アンタの闇はいずれヤマトも…ソイツも潰すことになる。…大蛇は闇ある場所に現る…、アンタもソイツも皆殺し…ッ、』息絶え絶えに嘲笑を零す男の口からゴボリと血が溢れ、ズルリと力を失った体が床に転がる。室内にジトリとした静寂が訪れ嫌な汗が背を伝い目を伏せては此れから自分がすべきこと、彼に掛けるべき言葉を潜思するもどう推し量っても自分が悪く、敵を制圧し落ち着いて考えられるようになった今、彼と向き合うことの恐れが胸の内に渦巻き。「……梔…、君が居てくれて良かった。あとは処理部隊に任せて充分な療養を取るんだ。…俺は少し、頭を冷やしてくるよ。」今の自分に組を率いる資格も彼を気遣う資格もない。だからと言って傷心できる立場でもない。結果、自分が導き出した答えはこの場から逃げること…。彼の顔をまともに見られないまま彼へと向くと短刀を握る一方の手にそっと手を重ねて静かに言葉を落とす。ぬるりと濡れる彼の血は己の刀を握ったときできた傷から溢れるものだろう。この手だけじゃない。彼の靭やかで弛まぬ身体と心に無数の傷をつけたのは他でもない自分。すりっと親指で彼の手の甲を撫でながら視線を横に流し何とか口元に微笑みを携えるとそっとその手を解放して手榴弾をコトリと床に置き。「…後は任せたよ。」目も合わせぬまま無責任と承知の上でそう告げると彼に背を向けて、屍を跨ぎ部屋を出ていこうとして。)
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