梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>梔
…っ…、
(赤髪の男の猫撫で声と差し付けられた脅しに背筋がゾワリと冷えて吐き気を覚える。催眠の解けた頭では“情報”などゴミの価値もない。こんな、こんな卑俗な男の言葉に自分は惑わされ、組を仲間を…大切な彼を傷つけたのか。もしこの場で自分に罰を科すことが許されるならば腹を切り裂いてしまいたいが、命を絶つことで許されるほど自分の犯した過ちは軽いものではない。男達以上に自分が憎い。奥歯をギリッと噛み締め暴走しそうな激情を理性で抑え込む。このまま感情に流されれば男達を全員斬り殺してしまいそうだった。でもそれではいけないとまだ脳内の情報の整理が追いつかない中、冷静になろうと努め一度部下と彼に真っ直ぐな視線を送りゆっくり目を伏せて。「……情報か。従えば今度こそ本当に教えてくれるんだよね?」『…ああ。当然じゃないか。』「…だったら君たちの部下に彼らから手を離すように言って。気が散るし間違って斬っちゃうかもしれないからね。」刀を構え直し真っ直ぐに梔に視線を向けて冷たい声で言い放つも、これは演技。この最悪の状況下、手負いの相手と部下を安全に逃がすには男達の隙をつくしかない。それには真っ向から迎え撃つよりも男達に従う姿勢を見せたほうがやりやすい。要は、復讐にまだ囚われているフリをして隙を狙う訳だが、この程度の打開策しか浮かばない己の愚鈍さを呪ってやりたい。上手く行くかはこの手と信頼のおける彼と部下の動き次第。2人なら自分の演技に気づいているはず…。赤髪の男の訝しむ視線が刺さるが『…抵抗やめてソイツ等から手ェ退け。』と命令が下され、梔に取り押さえられていた大男も抵抗をやめ、部下と対峙していた男も武器を下げて後に引く。それを確認すると刀を持つ手に意識を集中させ彼を見据えて「…梔…、君のことは大事だよ。でもやっぱりどうしても諦めきれないんだ。ここまで来たら後戻りは出来ない。…ごめんね。」微かに眉を下げて微笑むと刀を彼に向かって振りかざす。勿論、真の狙いは一番厄介な大男を戦闘不能し、その流れで2人の無事を確保すること。ギリギリまで刃の狙いを彼に向け、刀を持つ手に微かに力を込める。その時、視界の端に彼の兄、茉莉花が映ったように感じた。その手には拳銃。タイミングが良いのか悪いのか…判断する暇もなければ動き出した身体を止めることも出来ず刀の持ち手を微かに傾けて。)
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