梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
すまない、助かる。(部下から差し出された錠剤を受け取ると、他の者の視線がないことを確認して飲み込み、礼を述べ終わる前に足はもう目的へ向かって歩み始めており。早く、早く、一刻でも早く。こうしている間にも彼は危機に晒されているのだ。自分がもっとしっかりしていれば、じっとりとした汗が手足を伝うのにも似た不快な感覚につい思考も支配されかけるが頭をブン、と一度大きく横に振り、払いのける。今回は組の頭脳である彼の英明な作戦もないため、実力と運だけが頼みの綱である。無線用のインカムを耳につけ直すと部下が移動させてくれたのだろう、黒い普通乗用車に乗り込み…一瞬息が止まる。運転席でハンドルを握るのは兄の茉莉花だったからだ。『よう、忠告役に立たなかったみたいやんな?』「茉莉花…ッ!おまんは知っとたんやな…!俺を揶揄うのはまだ良いけんど、これはちったぁやりすぎじゃろがい…!」一触即発。梔の声は震え、目は憎しみで燃え、車内の空気は凍りつき、一緒に乗り込んだ部下達は俯く。『それについては悪かったと思ってる。もうちょっと分かりやすく伝えられなくてすまんな。実は…』茉莉花の声は自分が相手チームから誘われていた事、相手の情報の中で少し怪しいものがあった事を簡単に話し、それは慎重に街を走る車のBGM代わりのようだった。「…つまり、相手チームは榊さんの弱みとなる何かを持っている、と。」『せや。それが何かまでは分からんかったけんど、俺だってヤマトの忍長やってんや。何かきっかけさえあればそれも分かるはずや。』要するに榊を助けるために情報網としてヤマト側につくというのだ。『…信じられません』『…まぁ、そうなるわな。俺だってこんな状況では信じひんよ。』沈黙を保っていた部下の一人が素直に声を上げるも、近づいてきた相手チームの潜伏箇所…榊が囚われている建物が目前に近付きながら梔の出した答えは「…信じる。榊さんを助けられる希望が少しでも高くなるなら俺はそれに乗る。ただ、帰ったら覚えとけよクソ兄貴。」。
その後、すぐに部下の人数および作戦…と言っても自分と他数人の先発隊が突入し、交渉をする間に部下が建物を包囲、及びフラッシュバンを使用しての突撃。何かあったときのため、全員がインカムを装着し、逐一報告をする。その簡単な二つだ。組の者は皆頭の為に、と意気込んでおり、重火器を携えているものの、1番の目的は榊の奪還ということは当たり前で彼の皆何かあればすぐに攻撃を中止するよう指示済みである。茉莉花は相手に顔が知られているので前線に出さず、車の中で待機を、イチらは急患に対して素早く対応できるよう医療器具の積んだ車の中で同じく待機をさせており、それらを目視で確認を終えると数人の部下を引き連れて静かに、且つ急いで廃工場の扉の中へ突入して。
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