梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
(彼の優しい声は敵味方問わず意識に甘く作用する。それは敵意や戦意を喪失させることも容易く、それは目の前の男にも違いはない。榊に微笑まれた途端、にまにまと笑みを浮かべ『仕方ねェなぁ。オマエはボスのお気に入りだし、声くらいはかけといてやるよ。』とあくまでも自分たちの方が立場が上だと勘違いしているらしく、いい気分で彼の言葉に従うそぶりを見せたかと思えばぐい、と榊の頬を掴み『その代わり、俺らにも見返りがなきゃな?』と。少しの間舐め回すかのように榊のことを眺めていたが、その手を離しケタケタと笑いながらそう言葉を残して赤髪の男に榊が目を覚ましたことを連絡し。その間、その倉庫内にはなかった1人の部下と榊のみであり。
一方、長年の修行の成果か、イチとの距離が縮まった途端閉じた瞼の奥でぼやけていた意識は現実に引き戻され、急に感じた人の気配にバチッ、と目を開く。最初に視界に入ったイチに多少驚いていたものの、次いで脳みそが思い出したのは攫われた彼のことで、すぐさまイチの肩を掴み起き上がりながら「イチ、榊さんは!?」と掠れた声でそう問い。『うぉ、びっくりしたー…起きてんのかよ。……はぁ、お前ならそう言うと思ったよ。ったく、居場所ならまだ解析中だ。まだこっち側に要求は来てないし、暗中模索真っ最中ってわけだ。』いきなり動き出した梔にイチも驚いたらしかったが、すぐにいつもの表情に戻り現状を教えてくれる。人質だった二人の部下は怪我があるものの命に別状はなく、毒物等も混入された形跡はなかったとのことだ。『なぁ、中で何があったんだよ。誠だけ姿がないから何と無く想像はつくけど…』『目標場所判明しました!ここから東北東に約20km先の廃墟密集地です!』『よし、よくやった!』バタバタと慌ただしくなる音を背景に、何があったかを聞こうとするイチの話を遮るのは場所の割り出しをしていた部下の一人で、その手元の機会には言葉通りのデータが映し出されている。「…今すぐ動ける者を連れて付近まで行こう。やられた分はちゃんと返さなくちゃな。」場所の情報が分かった、と細かにその言葉が届くと同時に近くに置かれていた武器を身に付ける。愛しい彼を攫ったことを、深く後悔させてやる。瞳の中にはそう深く、濁った怒りの感情をてらてらと燃やして。)
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