梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
榊さんっ…!(縄の擦れる音が重々しく響く空間に身動きが取れない。どうすればこの状況を切り抜けられる?焦る頭では最悪の答えがグルグルと回って、息苦しさを覚える。いつもはずっと聞いていたいと思うはずの彼の声が、低く強くその最悪の答えを承諾してしまった。思わず彼の名が喉の奥からせり上がって掠れた音を成すが、その後の彼の微笑みが何を意味するかを理解し息を飲み、咄嗟に腕を伸ばすがその腕が掴んだのは投げやられた部下の体だった。彼が後ろ手に拘束され、大男に攫われる様子がコマ送りのようにやけにゆっくりと網膜に焼きついてジリジリと脳を焦がす。彼に下賎な視線を投げかけているだけでも腹わたが煮えくりかえりそうなのに、彼に一体何をしようと言うのか。いや、自分も彼に好意を寄せる男として彼が赤髪の男達に少なからずそういった目で見られているのだと直感して寒気がした。そんな視線も白煙に消されると、後を追おうとするが催眠作用に神経がやられて足が徐々に重くなり、その重さは次は瞼や体へと移動してゆく。しかし、彼を取り戻したいただ一心で無理やり足を動かし、何とか走り去る車に発信機を投げつけ、当てることが出来たことを確認すると意識はあっという間に地の底へ落ちて、車が走り去ったことに異変を感じた部隊がやってくるまでその場にいた部下も含めて眠ってしまって。
部隊が梔含め部下達を起こす頃、榊を攫った赤髪の男達は廃工場への移動を終了させており、ヤマトの追従が無いことを確認して榊を柱に縛り付ける。こちらの情報を持っていたのは致命的だったが、彼が手中にいれば人情に厚いヤマトは迂闊に手を出してこないだろう。首を挿げ替えるにもある程度の時間を要するはず、その間に立ち直せばいい、と考えが落ち着いた赤髪の男は、拘束され眠っている榊に視線を合わせるようにしゃがんでその顔を覗き込み、満足そうに笑んで『…用が済んだら飼い慣らしてもいいかもなァ?どう思うよ。』『アンタ前からヤマトの頭狙ってましたもんねー?』『目の前で領地奪って仲間二、三人殺っちゃえば飼いやすくなるでしょーよ。』等と非道な会話を部下達と交わす。元々金や領地を狙う目的だったが、副産物として榊を捉えたのは赤髪の男の自分勝手な欲のためでもあったのだ。その後、男達は見張り役を二人残して現状を確認する為に一度外へ出て)
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