梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>梔
(相手の的確な指示と纏めにより周囲の対処は万全、そうして訪れた廃墟の周りは閑散としており道を行く人影はなく、冷たい風が錆びた空き缶を攫っていくだけ。相手の小さな宣誓に気付くことはなく指定された廃墟の二階を目視してはアイコンタクトを送った後、廃墟一階の扉に手を掛けゆっくりと開く。劣化した蝶番がギギギと鈍い音を響かせ、恐らくこれだけで敵は此方の来訪に気付いただろう。一階はまだ日が昇る時間だと言うのに薄暗く廃墟というだけあって手付かず状態で雨漏りのせいか、各所の退廃が酷く床も所々穴あきがあり。一階に敵が潜んでいないことを確認しつつ奥にあるコンクリの階段へ進んでは二階へと。登りきったところで扉は一つだけ、気配からもこの奥に相手グループと人質がいることに間違いない。ドアノブに手をかけようとしたところで部下が『…自分が』と目配せしてきて此処は大人しく身を引くと部下によって開かれていく扉に緊張感を高める。少しずつ開かれる扉の隙間から見えてくる部屋奥はやはり薄暗い。そして扉が完全に開ききる前のことだった。隙間から僅かに見えた部屋奥に見える銃口、そして火薬が弾ける微かな閃光に気付くと咄嗟に部下の肩を横へと押しやる。重なるように銃声が鳴り響き銃弾が自分の顔横スレスレ、髪の毛を掠めるようにして通過し背後のコンクリの壁にめり込んで。『残念、当たらなかったかァ、おっとそこの僕、反撃はなしだぜ?』ヒヒヒと下品に笑う男、銃を打ち込んできた輩の顔は扉が自然と開ききったことで顕になる。赤髪で目付きの悪い男。その他に3人の男が居て、内一人が中央に置かれる椅子に縛られた人質に銃口を向けており、人質は何度か暴行を受けたのかぐったりしている。が、意識ははっきりしている様子で。先程の銃弾はご挨拶といったところだろう、部下が咄嗟に敵に向けて構えたピストルを下ろさせつつ赤髪の男に目を向けて。『お、分かってんじゃん。んで、約束のモンは持ってきたのか?』「悪いけど君たちのご要望の物は用意してないよ。」『んだと、コイツらがどうなっても良いってのか?』分かりやすく目くじらを立ててくる赤髪に溜息が零れそうになるのを緩い笑顔に変えて「…“青の狼牙”、“複製”……って言えば分かるかな?」と。此方の言葉にサッと顔を青くする相手のグループ。此方が出した2つのワードの1つは相手グループの要、主軸となっている裏取引相手の組織の隠名、もう1つはその裏取引組織を騙して契約している証拠となる言葉。つまり、この情報が漏洩すれば相手グループの基盤は大きく揺らぎ存在事態が危機に瀕するということ。金だ領地だとは言っていられないはず。赤髪は威勢は言いようだが多少は頭が回るようですぐに状況を理解したのか苦衷に表情を歪め隻手を上げると背後の男たちに人質を解放するような指示を与えて。人質の縄に手が伸びていくがまだ油断は出来ない。それは部下も梔も理解しているだろう。警戒を深めるよう無言で伝えながら男たちの動きに注視して。)
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