梔 2019-05-10 21:27:49 |
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榊>>
(近付く靴音に身を強ばらせたものの、それも一瞬。諦めに近かった心境も、彼の細く、柔らかい指先が何を語るかを理解すると嘘のように解けていく。「…ありがとうございます…!」こんなにも信じてくれる彼を、どうして自分は疑ってしまったのだろう。あの、全てを優しく無言のうちに包んでくれる背を見た日を忘れてしまっていたのか?溢れ出た感情は留まるところを知らず、上手く言葉にすることが出来ず、ただ彼の優しい手を両手で包んでそう言うしか出来なかった。それは、言葉を失うほど嬉しかったということもあるが、3割ほどは彼の目が笑っていないことに気付いたからである。水面をピシャリと打ったように周りの空気を引き締める彼の声は、いつもと同じはずのもので、それが更に恐怖心を抱くもの。それは最早問い掛けというより、答えに近いもの。ぞくり、と兄弟は時同じくして背中をよく冷えた包丁で撫でられたような感覚に陥り、目の前にいる麗しく、慈愛を与えるような彼が確かにこの組の頭なのだと冷たい言葉に抉られた精神を持って知った。そして、梔はそれが美しいとも思った。
『…っ、』かち合った視線は音もなく此方へ向けられた警告。茉莉花はこれまで同じような状況を何度も体験してきたが、今回は格が違う。いつも通り笑って全部ネタばらしをするつもりだったが、作りなれた笑顔が浮かばず、足が地に着かないような感覚に悪酔いしそうだ。蛇に睨まれた蛙、蜘蛛糸に絡め取られた芋虫のように、ただ殺されるのを待つだけという感覚。それでも何とかようやくの思いで笑顔を浮かべて『…流石坊やなぁ。確かに知ってんで、あの二振り。』と白状しつつ鞄の中から『酒盗』と『酔鯨』を取り出して梔へ投げて渡す。『お察しの通り、俺が盗ってん。それ。一応理由があってんやけど、そんなこと今更言うたち信じてもらえんわな。そこの情報だけ信じてもろたらええよ。』ひら、と振る手は態とらしいが、正直にあの二振りを盗んだ理由を話しても今は信じてもらえないだろう。それに、この二人の間がこんなにも強いもので繋がっていたとは予想以上のいい事を知ることも出来た。ならば今回は情報だけ渡してあとは後方へ下がろう、と考えを巡らせていると、飛んできたのは弟の平手。ピシャン、と小気味よい音を立てて兄の右頬へ平手打ちをすると「…これは勝手に持ってった分ぞ。…昔っから兄貴はいっつもそうや。ようわからん、回りくどい、ごたごたした事ばっかりして…帰ってきたら、全部話してもらうきの。」とやや早口で捲したてる。そして榊に向き直り、深く頭を下げ「身内の問題に巻き込んでしまい、申し訳ございません…!…しかし、こんな兄ですが、今回の情報は嘘や出任せではないと思います。今回の相手との落ち合いには、これを使っても差し支えないかと。」と心からの謝罪と仕事の話を。兄弟喧嘩の延長のようなくだらないことで、兄がこの二振りを盗み出したことは到底考えにくいことではあり、彼の手を煩わせてしまった後悔は大きいが、今重要なことは相手チームへの勝利、人質の奪還。兄の心情は信じられないが、情報だけなら確かなものであろう。そう判断すると榊へ視線を向けて。)
(/いつもお付き合いいただきありがとうございます!両親についてはあまり考えていませんでしたが、とりあえず引退したか、既に死んでいるかのどちらかにしようかと思っています!榊さんについては妹分さん、オヤジさん、イチくん以外にスラムでの親睦のある人達は他にいらっしゃいますか?今すぐというわけでなく、ぼんやりこんな人とかいた感じ、これから増えるかもしれないけど深くは決まってない、というふうでも構いません、宜しければ教えていただけると幸いです!)
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