梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>梔
(愚問だ、とまだ整理しきれない頭でそれだけははっきりと思う。彼を、梔を信用できるか、そんなもの聞かれるまでもない。予期せぬ彼の言動に停止していた思考が茉莉花の問いによって少しずつ動き始めると同時に心がすっと冷えていく。驚きで瞬かせていた双眸を細めて、茉莉花の問いに答えることもそちらを見ることも一切せずに平伏する彼をただ黙って見下ろし。…十秒後、カツンと靴音を立てて彼とのほんの数歩の距離を縮めると片膝をついて、「…梔、頭を上げて。」とやや低声で命ずる。彼が自ら顔を上げる前にその白い頬に手を添えて顎先に指を滑らせると上向かせ、焦がれてやまない紫眼が見えたとき、優しく慈しむような眼差しを向けて「君は、たまに馬鹿になるよね。俺がそんなことで君を咎めないのは君自身も分かってると思ったけど。…まあ流石にずっと疑われてたら寂しいくらいには思うけど結果信じてくれたんでしょ。なんの問題もないよ。それにすぐ報告しなかったのは君のことだから俺の体調を気遣ってのこともあるだろうし…。……ごめん、一人で辛い思いをさせたね。」眉尻を下げて顎に添えていた手で少しでも彼の心が晴れるようにと艷やかな髪をやんわり撫でる。きっと彼は自分の想像する以上に苦しんでいるはずだ。彼の親、そして先代から賜った大事な愛刀。思い入れも深いだろうそれらを失くした彼の心境は計り知れない。病み上がりの身体で朝まで奔走して…、やりきれない思いで優しく彼の髪を撫で続け、そう優しく接する裏側で己の心はざわりざわりと底冷えしていた。何も知らずに罪のない彼を追い込み此処までさせた己の愚鈍さと不甲斐なさに。そして、───「茉莉花、……何か知ってるね?」常の声、だが地を這う怒気と冷酷さを秘めた問い。瞳は一切笑っていない。目の前の彼にはその表情が見えているだろう。さらりと彼の髪を撫で終えながら立ち上がると、茉莉花の正面に立ち、最初に問われてから初めてその双眸と目を合わせ「…答えてくれるね。時間がないんだ。」と茉莉花の瞳を暗く射抜いたまま緩やかな微笑みを携えて。……此れは鎌掛け。茉莉花が何か知っているなんて確信はない。ただその声と弟に向ける態度からほんの些細な違和感を覚えただけ。何も無かったとしても茉莉花の弟に対する発言は許せないものがあった。茉莉花を見据えたまま答えを促すように僅かに首を傾け微笑みを深くして。)
(/度々すみません。背後が失礼します。今回ふと思ったのですが梔さんのご両親は存命なのでしょうか?本当にふと思っただけで何も考えていないので、ざっくりでいいですしまだ追々考えていくようでしたらそのように教えていただけたらと思います!)
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