梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>梔
(朝、彼の気遣いもあって充分な睡眠がとれたおかげか体調は好調。朝の身支度を済ませて彼が多端に動いていることなど知りもせず、本日のスケジュールを大まかに頭の中でさらう。と、穏やかな朝には似つかわしくない、けたたましいノック音が部屋に響くと共に下っ端くんの『ボス、いらっしゃいますか?』と酷く焦った声が聞こえ。嫌な予感がした。昨夜彼が言っていた急用と関係あるのだろうかと勘ぐりながら扉を開けると下っ端くんが泣きそうな顔で例の封筒を渡してくる。封筒を開く前に下っ端くんの頭を撫でて落ち着かせ、微かに緊張で強張る指先で封筒の中身を見るとすっと冷たく目を細め。──汚い、下衆なやり方、だが己を動かすには最も効果的なやり口だ。ご丁寧に脅迫状の最後には“反撃の動きがあれば部下の命はない”とまで。瞳の奥が憎悪に染まり封筒を持つ手に力が籠もるも『ボ、ボス…。』と震える下っ端くんの声に我に返ると小さく謝り常の微笑みを浮かべて、梔に現状を報告し可能であれば一度アジトへ足を向けるよう伝えてほしいと指示をして。人質の安否を考えればすぐにでも救助に向かいたいところ。正直、金やら領土はくれてやりたいがボスとして、組織として示しをつけるにはそういう訳にはいかない。一瞬…、すごくどうでもいいと考えてすぐその邪念を捨てると再び封筒に目を落とす。敵の正体は不明瞭。落ち合う場所は指定されているものの恐らくそこは廃墟で敵アジトではない。金だけでなく領土まで要求するとなれば他国の可能性も出てきて戦力は未知数。事前の対策が練れないとなると幾分か此方が不利。また、人数は指定されていないが大人数で行けばそれだけで“反撃”とみなされ人質の身に危険が及ぶだろう。となれば落ち合う場に向かうのは2,3人で戦力のある者。だとすれば彼、梔の力は欲しい。あとは保険として気付かれぬよう近隣にいくつか部隊を忍ばせるか。思考を巡らせつつ数人の部下に声をかけて対策に備えるよう命じると自分は執務室に向かい、落ち合い場周辺を含む地図を扉を背にしたテーブルに広げて位置の確認をしていて。)
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