梔 2019-05-10 21:27:49 |
通報 |
>>榊
…違いありませんね。(注文が終わり、再び空間が2人のものになると彼の浮かべた挑戦的な笑みに思わず背筋がぞくりと震える。いつものふわりと揺れるような彼の可愛らしい笑みとは違う魅力に一瞬言葉を失う。嗚呼、こんな彼の表情が見られるなんて。しかし、そんな浮かれた脳味噌も出された名前が己が兄のものだと分かれば、緩慢な動きに戻る。「酒にはあまり強くありません、が据え膳食わぬは何とやら。誠さんのお酒を頂けるなら、俺も貴方を酔わせられるよう少々張り切らねばなりませんね。…特に兄には負けぬよう。」彼は火の付け方がとても上手だ…それとも自分の理性が低くなったのか?彼の言葉に簡単に乗せられ、燃え上がるとニコリと笑みを深めるが、その眼の奥が隙を狙う大型獣のようにギラついていることには気付かない。もっと知らない彼を見たい、知りたい。今、頭にあるのはそれだけ。「光栄です。」乾杯の音頭の穏やかながら率直なそれを耳にし、彼もデートだと意識してくれていたことに純粋に喜ばしく思う。彼の酒を煽る喉の動き、僅かな吐息、僅かな挙動にも意識を奪われると、不躾な視線を思わず向けてしまい。その視線は彼が此方に向けた視線と交わり、誤魔化すように自分も一気に煽る。酒は飲み慣れないが、すっきりとした果実の味わいに彼の優しさを感じ、味覚に集中をやれば視線を一度宙に浮かせ。その視線は次いで徳利の縁を叩く彼の柔らかな指先に落ちると、「失礼します。」とお望みの日本酒をその徳利に満たして。「これほどの美酒は久しいものですね。肴によく合う…勿論、それも貴方と飲めるからこそ格別なのですが。」と早くも酔ったような言葉を。それは、酒にか、彼にか、どちらにせよ早々にへばってしまうわけにもいかないな、と気を引き締めなおして)
トピック検索 |