梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
…とても、素敵なお店ですね。(手のひらで分け合った体温が無くなる頃には小綺麗に整えられた個室の座席に着いており、ぽつりと一言。この店の暖かく、優しい雰囲気は彼によく似ている。古く続くものを継承しつつも自分の色を散りばめ、自分の色に染め上げる。温故知新とも言うのだろうか、落ち着いており、決して派手ではないが、絶対的な安心感と安らぎをもたらしてくれる空間。そう考えると、彼のテリトリーに入れてもらえたようで嬉しくて、少しくすぐったい。「ありがとうございます。お料理上手な誠さんが言うのであれば間違いありませんね。…はは、折角誠さんを独り占めできる機会に、それは些か勿体無い。お天道様も本日は大目に見てくれると信じましょう。」なんて、彼の酒を嗜む姿を見たいから、と8割方我欲を隠した返事を。それがいつもより饒舌なのは、彼の戯けた笑顔にのぼせたか、はたまた贈り物への不安の紛らわしか。その箱の中身は、黒と紫の編み込まれた根付紐と黒曜石のあしらわれた彫刻の根付。これを見たときに彼の目の色、髪の色と重なり、一段と輝いて見えた…と同時に彼の刀に収まるお守りを思い出し。頭であれば仕方ないことではあるが、最近立て続けに起きた事件は気高く、優しい彼の心身ともに傷跡を残してしまっているのは火を見るより明らか。彼の側で忍び寄る脅威全てを叩き切ってしまえたら…そんな願いに釣り合うほど自分の実力は高くなく、そんな時に目にしたあのお守りは、とても尊く見えた。彼の大切にしているそのお守りと比べると、気休め程度にもならない、ただの自分のエゴだが、彼の安全を願う意と…あわよくば自分の瞳と同じ色を身につけた榊さんを見たい、という『お返し』とは名ばかりの我欲の塊。我ながら汚いな、とマスクの下で自重気味に笑えば一度その思考に蓋をして「では誠さん、何を頼まれますか?酔い潰れても俺が介抱します…と、言えどもそれは俺の願望に留まりそうですが。」とあまり上手くない冗談まじりにメニューを開き。料理上手で、酒の嗜み方も心得ている彼の注文ならば間違いないだろう、と注文を聞くと、自分もそれに合うような肴を店員に頼んで。)
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