梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>梔
(青年は『オヤジ』の家に入っていく相手を確認すると張り詰めていた緊張の糸が解け、そっと息を吐き出す。一瞬感じた殺意、未だヒヤリとする首元に手を当てて『さっきのお兄ちゃん格好良かったね。』と無邪気に笑う妹の声に目を細めその頭を撫でると自分たちの小屋へと。室内へ入る間際、ちらっと相手の入った小屋へと暗い瞳を向けパタンと静かに扉を閉ざし。
一方、『オヤジ』の小屋、家主である男は46歳で此処一帯では重鎮。この廃れた場所で長く暮らしているとは思えない鍛えられた体躯に優れた身のこなしを併せ持ち、榊に窃盗やら戦闘のノウハウを教えた男でもある。榊とは特段仲が良い訳でもなく、教えを説く代わりに榊が得た手柄を山分けするあくまで利害の一致の上での関係だった。だから今回茉莉花に話を持ちかけられたときも榊に迷惑が掛かるかもしれないと承知の上で話に乗った。そして梔が小屋の扉を叩く頃、男は既に部屋の奥で寝ていて、最初のノック音で目覚めるも面倒臭さから無視をする。しかし何度も叩かれて部屋にまで侵入されては放おっておくわけにもいかずに暗闇の中でノソリと起き上がり、侵入者、梔の気配を探って。この時、気配だけでは茉莉花から聞いていた男が梔とは分らず、兎に角無法者を取っちめてやろうくらいの気持ちで暗闇の中、気配を消すと短刀を片手に相手の背後を取って『おい、てめぇ勝手に入ってくるとはなにもんだ。』と低く凄み羽交い締めにしようとして。)
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