梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>榊
(小さな頃から半ば強制的にこちらの世界に引きずり込まれた少年は、その時と変わらぬ柔らかな笑顔のまま大人になってしまったのだろう。愛情をうけるべき親もなく、汚い世界を見せつけられ、早すぎる幼少期の終わりを告げられた彼の境遇に大人として悔しく思う。今も小さく笑みをこぼしていたが、すぐに切り替える彼をもっと甘やかせたらよかったのになぁ、と内心呟きつつ彼の高い読解力、理解力…情報力とそれらを見事に組み上げる知識、知恵に『流石やな、坊。よう勉強してはるわ…偉いなぁ。』と再び彼の頭を軽く撫でる。彼の頭を撫でるのが癖になってしまっている…それは彼の表情や仕草が可愛らしいからか、弟にはない自分の特権を存分に楽しみたいという独占欲からか。『大筋は俺も同じ考えや。ちゃう点は、狙うんなら坊の知り合いを囲ってるとこを狙おうかってとこかね。…大蛇が一番簡単に手を出せるのは人質にされとるスラムん人らや。とはいえ切札は大切にしとるはずやから…一番警戒が弱わいとこの人質解放を狙うちゅうのはどないやろか?何かしら知っとったら聞き出しも楽そうやさかいに。』そのように告げ彼の成長を喜んで満面の笑みを浮かべていたものの、彼の携帯に着信が入ると少し顔が曇り、その発信した相手が弟と分かると更に渋い顔をして2人の会話に聞き耳を立てて。
「…そがにほたえなや。舌無いなるで。」彼との電話で何を話そうか、と痛む頭を更に締め付けるのは転がした男の吠える声で、上記を言い終えるか終えないかの内に相手の口の中に苦無を入れて睨みつける。そもそも情報が取らなければこの男はすぐにでも処分した方がいいのだ。彼の住処が知られるのはまずい、それ以前に自分がここにいなければ罠なりなんなりを仕掛けて彼の身に危険が迫ることもあったと考えると少しイラついた表情が溢れる。しかし、携帯から彼の優しい声が聞こえるとすぐにそれも消え失せ「榊さん、お忙しいところ申し訳ありません。大蛇の下っ端を捉えました。」と足元に転がる下っ端と節々が悲鳴をあげる体を無視していつも通りの声で振る舞い「如何しましょう。」と彼の指示を仰ぎ。)
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