執事 2019-05-09 18:21:58 |
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ん、────
(暗く、陰鬱な夢をみた、全てを失う瞬間を繰り返す夢。だが憂うことはない、その夢はいつも見る夢なのだから。眠りの最中、突然目に刺激が走り思わず顔を顰める。昨晩は新商品の企画書に目を通していて寝るのが遅くなってしまった、そのせいか圧倒的に睡眠不足で体は明らかに睡眠を欲している。しかし布団に潜り込む前に誰かが頭を触れる感触がして、その後体を起こされた。誰がこんなことをしているのかは言うまでもない、寝起きの頭でもわかり切っている。「無理やり体を起こすな……」ボヤくように言っていると鼻には華やかで僅かに甘みも含んだ香りが届き、そこでようやく意識が覚醒した。視界に入るのは1人の男、否男と言うのは厳密には正しくない。自分に仕える執事なのは間違いないのだが、その実は人間ではないのだから。朝からこんな奴に迎えられるとはなかなかに自分の運命も数奇なものだと頭の片隅で考えながら、手渡された新聞に目を通す。流行りものに政治の話題……新聞にはヴェルドレッド家が赴く必要がある案件は載っていない。それならば表の顔である菓子会社社長として情報を集めるとしよう。相手の問いには「スコーン」と短く答えつつ新聞に目を通していく。いつもと変わらない、比較的穏やかな一日の始まりだ。芳醇な香りを放つハロッズを受け取ると口に運んで1口飲み込む。喉奥から立ち上る爽やかな香りに包まれれば意識は完全に覚醒し、いよいよアーサー・ヴェルドレッドとして動く時間がやってくる。新聞に目を落としたまま「ロイ、今日の予定は?」と問いかける。予定はすでに詰まっていて早く動かねば全てをこなすことはできない。すっかりヴェルドレッド家当主の顔つきになりながら、また1口紅茶を飲み込むのだった。)
(/初回ロルありがとうございました!ではこちらも背後は失礼いたしますね。ご質問やご相談等などありましたらいつでも話しかけて下さいね。)
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