執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>ギンハ
じゃあ、僕が半分持って歩いてあげる。それなら良いよね、ごくごくまれに。(泣いて喚いても何も変わらない、そう理解した以上その他大勢の幼子がそうする様に、途方も無い不安と心細さに涙を流すと言う選択肢は己の手から離れていた。少なくとも、今目の前にいる彼はこうして優しくしてくれる。性質は違うが、優しく世話を焼いてくれる存在。住んでいた家を離れ、親元を離れ__今や、彼に頼る他無い己の目にはどうしたって大好きだった兄の姿に彼を重ねずには居られなかった。鼻先を突く指先にきゅっと視線を集めて寄り目になりつつころころと小さく笑って見せると、あくまでこの部屋の外を出歩く意思を失ってはいないという事を示す一方で、彼の言葉を拾う事できちんと話を聞いていると言う事実をアピールしてみせて。意図的な、というよりは寧ろ本能的に心細さから気を逸らそうと膨らんでゆく好奇心が、この屋敷に住まう"他の誰か"に出会うチャンスを見逃さなかった。指折り数えて候補を挙げるその声に耳を傾け、うんうんと悩む様な仕草と共に小さく唸る。どれも、これまで目にしたことない、けれども本を読んでその存在に思いを馳せた事のあるものばかり。己の記憶を掘り起こしつつ、漸く答えを待つ彼の目へ己の視線を合わせると「吸血鬼__僕、吸血鬼に会ってみたい。パパとママと観たお芝居に出てきたんだ、吸血鬼。本当に居るとは思ってなかったけど…もし本当に居るなら、僕会ってみたいんだ」と答えを示して)
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