執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>レベッカ
(開け放った窓から、心地良い夜風が柔らかな花の香りを部屋へ運び入れる。日向ぼっこする動物の様に、ほんわりと目を閉じ微風を浴びながら、クイと一口呷ったのは透き通ったマゼンタの液体。とびきり甘い魔界の酒だというそれは、悪魔たちが差し入れてくれたものだ。濃厚なのにくどくなく、けれどしっかりとした甘み。甘い、という味覚を好む怪物にとってそれは、絶え間なく飲めてしまう代物で。けれどアルコールと自身の身体は相性が悪かったらしい。大きなデキャンタの2割ほどを飲んだところで、十分すぎる程に酔いは回った。酩酊感に身を預けようとした瞬間、鼓膜を震わす貴女の声。音量は小さく、空耳だろうかとぼんやり扉を見詰める。けれど追い打ちの様に叩かれた扉に、これは現実なのだと思い腰を上げ出迎えに向かおう。千鳥足で1、2歩進んだ所で、ズドンと派手にすっ転ぶ。その音と振動は、恐らく扉の向こうの貴女にも伝わっているだろう。扉に手を突きながら重たい身体を起こし、ギィィィと重苦しい蝶番を力任せに押し開けて「__ホントに、レベッカ?」いくら馬鹿な自分でも、ヒトが一人で特定の怪物の部屋へ辿り着く事がどれほど困難かは理解している。これは酒の見せた泡沫の夢かもしれない。故に夢か現か確かめようと貴女へ手を伸ばし、いつもより無遠慮にべたりと頬に触れて「…暖カイ。」貴女を室内へ招き入れる事も忘れ、感想を呟くと同時にへにゃりと表情筋を緩ませて)
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