執事長 2019-05-03 19:58:05 |
通報 |
>ヴァレリオ
__……。(廊下の奥から聞こえてくるのは、何やら騒がしい足音。何事かと眉間に皺を寄せた刹那、聞き覚えのある声にて名を呼ばれ反射的に立ち止まる。背を向けたまま振り返る事さえなかったが、僅かに顎を引いて深く嘆息し。謝意を告げられ下唇を噛む。鋭く伸びた牙が浅く皮膚を切り裂き、怪物らしい黒い血が口角から顎を伝う。嵐のように近付いてきた跫音は、風の如く音も無く遠ざかっていく。小さな舌打ちを零す、これは貴方や使い魔を責める為の物ではなく。ぶわりと魔力の風が一陣吹き抜けたかと思えば、吸血鬼の姿は廊下から消え、貴方の行く先を塞ぐかのように眼前に佇み「…俺は、お前にそんな顔をさせたかった訳じゃない」目は合わせず、相変わらずの仏頂面で斜め下の虚空を睨み付けながら放った言葉。声量こそ大きくはなかったが、静かな廊下でははっきりと聴こえるだろう。居た堪れなくなったのか、唇を汚す黒い血を手の甲で拭いながらゆっくりと振り向いて、貴方と同じ進行方向を向き「態々追い掛けてくるなんて、ホント馬鹿。__戻るよ、ヴァレリオ」憎まれ口を叩きながらも、今度は一人で我先に歩き出すことはせず、貴方の反応を待つ。黒薔薇の屋敷では常に死の危険と隣り合わせ、自室でならまだしもこれ以上廊下で一人にさせておくわけにはいかず)
トピック検索 |