執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>レナード
(急転直下。彼が此方に放った何かを反射的に手の内に受け取って顔を上げた時には扉の向こうにその姿が隠れるところだった。言動を諫めたことは道徳的に当然で、間違ったことは何も言っていない。自分が正しい。筈なのに、投げやりに寄越された言葉一つでどうしてこんなにも胸が締め付けられるのだろう。立ち去る背中があまりにも寂しかったからだろうか。それとも彼と話がしたいと密かに願っていたことが叶わなかったからだろうか。あまりにも急な出来事で引き留める時間も与えられなかった。またこうして会えるかどうかなんて、それこそ、神にしか分からないだろうに。浅はかな己自身の言動を悔い改めながら五指を少しずつ開けば、輝く真鍮が顔を覗かせた。一瞬の沈黙。脳裏に鮮やかに蘇る数刻前の出来事。美しい細工が施された金色の懐中時計を右手にぎゅうと力強く握り締め、切なげにキイキイと鳴く蝙蝠の体に逆手を伸ばし、抵抗されなければ片腕に抱え、それが無理でも扉を開けて共に部屋の外に出よう。屋敷の住民を伴わず一人で出歩くのは危険である、命が惜しいなら部屋の中で大人しくしておけばいい。そんなことは今は些細な事だ。長い長い廊下、左右を見渡せど、吸血鬼の青年の姿は既に見えず珍しく語調を荒げながら「……クソ!俺は馬鹿か!」地を蹴って、適当に当たりを付けた方向へ駆け出す。とにかく彼に謝りたい。その一心で、真っ直ぐに踏み出した爪先には、一切の迷いはなく、ただ直向きに地を蹴って)
(/愚息の性格的にスルーするのは無理そうなので、恐れ多くも追いかける方を選ばせて頂きました。レナード様のいじらしさに愚息をどつき回したい背後です。格好良さと愛らしさの奇跡の共存…無駄口はこの辺りでさておき、改めましてよろしくお願い致します。/深々礼)
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