執事長 2019-05-03 19:58:05 |
通報 |
>ミリアム
あァ?アンタらには銃弾効かねェのかよ。
( 善意に純粋な善意をお返ししよう、などと誠実な思いで約束に至った訳ではなかったが、彼女の考えが全くもって読めないのと同時に此方の心の内など彼女に漏れ出ている筈がない。突発的に連れて来られた屋敷での出来事は、叶うものなら誰もが耳を疑うような、突飛で愉快な物が望ましい。そうすれば己も満足の行く土産話として人間界へ持って帰れるだろうといった算段を、勿論彼女は知る由もないのだが、それにしたって声を荒らげてまで人間一人の命を護らんとするその姿は、当の人間から見てもまさに化物らしからぬ様だった。そして、己の腕を証明するのに最適かつ生活の一部と化した銃すら、化物を前にすればただの鉄の塊でしかないと彼女は言う。聞き捨てならない情報にあからさまに表情を歪めたのは、銃が無ければ戦力が低下するからではなく、己の精神的な部分に関与する理由からであった。尤も自分自身その理由を明確に自覚していなかった為、次の瞬間には先程と何ら変わりのない楽観的な笑顔を浮かべる。「アンタさァ、俺がいっちばん知りてェ所だけ上手く避けて行くんだな。別に化物が居ようが殺されようが知ったこっちゃねェけどよ、──ミリアム、俺は今何で此処に居る?」正面から一歩ずつ順調に距離を縮めまだ呼び慣れない彼女の名を口にすれば、──バン、と大きな音を立てて彼女が腰掛ける椅子の背凭れに右手を掛け、表情は一切崩さず見下ろす形で問うて )
トピック検索 |