執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>ウーミン
(組織であったり自分個人に恨みを持つ者に拉致されることは何も今回が初めてではない。見知らぬ部屋で目覚めた後、次に出てくるのは屈強な男だと相場が決まっている。今回もその類だろうとの安易な予想は外れ、呼びかけに応じて姿を現した訪問者は、可憐な少女の形をしていた。白いワンピースから覗く華奢な手足、庇護欲を誘う小振りな愛らしい顔、さらりと揺れる金糸の艶やかなこと。眼前に広がる全く予期せぬ光景、それを前に、らしくもなく動揺が走り、思考が止まる。虚を突かれた、ほんの刹那の事。大型の鳥類が羽搏くような、大きな羽音に我に返った時には、両翼を広げた少女が目の前にいた。両足の上にすとんと腰を据えた自分より一回りも二回りも小さな体躯の相手。彼女を拘束して組み敷くことなど容易い筈なのに、どうにも両の手が思い通りに動かない。纏まらぬ思考とは裏腹に、数々の死線を潜り抜け来た体が、細胞の一つ一つが、少女の形をした何かの脅威に気付いているからに他ならない。綿毛のようにふわりと舞った無数の羽毛が、寝台の上に降り注ぐ様を横目に、ゆるりと口角を吊り上げて見せる。焦燥を感じ取られてはいけない。いつものように生き残りたいのなら、得体の知れないモノの隙を突かなくてはいけないのだから。まずは話をして、彼女の情報をなるべく聞き出そうと)……驚いた。君があまりにも愛らしいから天使が迎えに来たのかと思ってしまったよ。それで、お願いって何かな?
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