執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>リアンナ
駄目、泣かないの。女の涙はここぞって時に取っとかなきゃ勿体無いでしょ(あと僅かでも嵩が増せば決壊してしまいそうな涙のダム、それが視界に入ってしまえば冷たい胸が締め付けられる。つられるようにぐ、と唇を噛んで湧き上がる感傷を堪え、眉をハの字に曲げながらも切なげな微笑を浮かべて。手と手が重なる瞬間、引力を感じれば咄嗟に踏み止まる。「――っン、」油断していた―貴女はもっと貧弱で、聞き分けの良い子だと。しかし違った、此方へ伸びてきた唇に自身のそれを奪われ、その間に脳内で木霊する貴女の言葉と唇の柔らかな感触が鬩ぎ合う。いくら好物ではないとは言え、久方振りに流れ込んでくる食事の感覚に、いつもは巧みに隠している怪物の本能が誘発される。今すぐにでも引き離さなければならないのに、筆舌に尽くし難い空腹が満たされていく感覚に理性の波は攫われて。強く握り締められた手を強引に振りほどくが貴女から離れることはなく、むしろ後頭部と腰にそれぞれ手を回すことで密着して。仄かに暖かい唇をまさしく味わうように、何度もリップ音を立てて食むように啄む。随分長い間重ねていた唇をそっと離せば、額と額をくっつけて目を閉じ「……畜生、ッんで美味ぇンだよ…」零れ落ちたのは粗暴な男口調。口であれだけ捕食を拒否しても、いざ口に餌を放り込まれれば貪ってしまった己の浅ましさを悔やむ様に柳眉を歪める。何よりも、貴女を食事として美味だと感じてしまった事。それがこの上なく恨めしく、それでも食欲が鳴りを潜める事は無い。絶食状態で耐え忍ぶ方がまだ容易だった、こうして中途半端に食事を口にしてしまえばもう歯止めは効きそうにない。冷たい両手で声を失った貴女の頬を包み込み、辛そうに荒い溜息を一つ吐いて)
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