執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>ヴィンス
(扉を開けると真っ先に彼の姿を探す。忙しなく動く視線はやがて一点に集中し、崩折れるようにして木編みのベッドの横へ膝をついた。ああ、なんて事だろう。一目見ただけで、以前出会った時と比べ儚く痩せ細ってしまった姿は大いなる衝撃を自分へ与える。遣る瀬無い思いに深く深く息を吐き出し、震えそうになる身体に喝を入れて強靭な精神力のもと制御する。「すまない。君を心配させるつもりはなかった。だが…君のことを思うと脚の痛みなんて忘れてしまっていたよ」微々たるものだが、彼の表情が僅かに和らいだ気がした。慕う気持ちが見せた幻覚かもしれない。だが、綺麗なパステルイエローの花が自分に勇気をくれる。素直に謝罪をいれ、時折短く痙攣を繰り返す左脚の付け根を左手で押さえるように撫でる。この脚の痛みなど、目の前の貴方に比べたら些少な問題である。そっと包み込むように彼の手に己の手を合せ握り込む。腕に隠されてしまった瞳。綺麗な双眸を見詰めていたくて、諦めきれずに熱視線を注げば、ちらりと覗いたレモン色の瞳に、くしゃりと目尻に皺を寄せた。「私もとても会いたかったよ、ヴィンス」何よりも大切な貴方。万感の思いを込めて気持ちを伝える。言葉だけでは足りず、分不相応と分かっていても、信仰を捧げるような気持ちで淡い桃色の花弁へ唇を寄せた。労わるように細くなった手を、彼の手に重ね合わせた自信の手で撫で摩る。心が悲しくて仕方がない。「ヴィンス、どうか私に教えてくれ。何故そのように弱ってしまったのだ…。君の為に私が出来ることは何かないだろうか」切実たる思いを言葉の端に乗せ、教えを乞う。火傷しそうなほどの熱量を持つ双眸は一心に彼へ向けられ、貴方を助ける為ならばこの身も厭わぬ、そんな決意を底に秘めて)
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